川辺駿、Jリーグ→欧州初挑戦の訳 「想像以上」だったスイスで実感…日本と「違いすぎる」点とは?

グラスホッパーでプレーする川辺駿【写真:Getty Images】
グラスホッパーでプレーする川辺駿【写真:Getty Images】

【インタビュー】スイスの名門グラスホッパー移籍で「ポジティブな点はいろいろある」

 欧州トップリーグへどのようにたどり着くかは人それぞれであり、さまざまなところに可能性がある。イングランドやスペイン、ドイツといったトップリーグの2部からスタートする選手もいれば、オランダやベルギー、オーストリアというリーグでステップアップのきっかけを探す選手もいる。そうやって世界中の選手がしのぎを削っている。

 日本の中でも「ヨーロッパ移籍なら5大リーグ(イングランド、ドイツ、スペイン、イタリア、フランス)へ行かなきゃ意味がない」と言う声も少なからずあるが、ステップアップリーグでプレーすることで得られるものは決して少なくはない。

 2021年7月にサンフレッチェ広島からスイス1部の名門グラスホッパーに移籍し、22年1月にプレミアリーグのウォルバーハンプトンと契約を結んだMF川辺駿もそのことに同意する。(取材・文=中野吉之伴/全4回の2回目)

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「ポジティブな点はいろいろあると思います。個人的なことで言えば、まずヨーロッパクラブのスカウトに見られる人数、頻度が違いすぎるんです。自分が半年でウルブス(ウォルバーハンプトン)と契約できたのもそうやって観られる場所にいたからだと思います。ウルブスがグラスホッパーと提携しているというような関係性もこっちにはある。それだけではなく、スイス国内でも見られるし、スイスと隣接している国からは、日本でやっているよりは間違いなく見てもらえる。『どこどこのスタジアムに、どこどこのスカウトが来てたよ』という情報も入ってきますね」

 スカウティングに関しては、最近はオンラインで世界各国の試合映像が手に入るため、遠くの国の選手情報も得ようと思えば得られる。ただ、物理的な距離感というのはまだまだ大きく、ヨーロッパの方が注目はやはりされやすい。ヨーロッパの大きなマーケットに入っていれば、活躍すれば見に来てもらえて、「オッケーだったら取ろう」と移籍話がスピーディーに進む。

「日本だと活躍しているけども、こっちのネットワークにひっかからないというのがあるかなと。それがこっちに来た一番の理由でもありますね。こっちの土俵に立つというか、こっちに来てどれだけできるかを示して、上がっていくのが必要だった。なかなか日本人がドイツのビッグクラブへというのは簡単ではないと思う。もちろんあるとは思いますけど、こういう道も重要かなと」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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