GKコーチ「今までにない人」と驚き 広島がJ1上位戦線へ浮上、新任監督“スキッベ流”の躍進術とは?
広島の好調を支えるのは、監督とスタッフ、選手たちを繋ぐ信頼の連鎖
ボールを積極的に奪いに行く。数的同数での守備を怖れない。ボールを握っていなくても、相手陣内でプレーする。「1トップだろうが、2トップだろうが、攻撃的に行くことは変わりない」と語り、「相手がどう対策をとってきても、それは重要ではない。自分たちがどんなサッカーをするかだ」と言い切って、主体的なサッカーにこだわりを見せる。
そういう戦術的な部分が広島のサッカーに娯楽性を与えているのは、間違いない。だが、いくら理想を掲げ、論理的かつ効果的な戦術理論を掲げていても、選手たちが躍動しなければ、それは絵に描いた餅になる。
監督という仕事の重要性は、選手やスタッフの力を最大限に引き出すことであり、戦術とはそのための1つのパーツにすぎない。今の広島はスキッベ監督が選手やスタッフを徹底的に信頼し、それに対してチーム全員で応えようとする意志がある。
だからこそ見ていて気持ちがいいし、やるべきことも明快。6月25日のアビスパ福岡戦(3-1)後、藤井智也と住吉ジェラニレショーンが肩を組んで「すっごいよっ、一体感」と叫んでいたが、こういうことが試合に出ている人と出ていない選手が一緒に叫べることが、素晴らしい。
「(7月17日の京都サンガF.C.戦まで)9連戦が終わったら3連休だ」とスキッベ監督は語りかけ、選手たちは歓喜した。ただ、指揮官は信じている。休みの間でも選手たちが自主的に身体をケアし、リカバリーして、練習場に戻ってくることを。だからこそ、彼はオフ明け初日から強度の高い練習メニューを組む。広島の好調を支えているのは、監督とスタッフ、選手たちを繋ぐ信頼の連鎖なのである。
(中野和也 / Kazuya Nakano)
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