グラスホッパーDF瀬古歩夢、スイスで感じた“日本との差”「こっちの方が圧倒的にある」 掴んだ新たな感覚と「自分の間合い」
【インタビュー】22年1月からスイス1部でプレーする瀬古歩夢を直撃
2017年にセレッソ大阪でクラブ最年少となる16歳11か月でトップチームデビューを果たした22歳DF瀬古歩夢は、現在スイス1部グラスホッパーに在籍し、スイスリーグで自分と戦い続けている。22年1月、移籍後の半年間は試合に出れないという覚悟をもって海を渡ったなかでリーグ戦13試合に出場し、試合を重ねるごとに評価を高めた。
競り合いの強さやビルドアップからの正確なフィードは武器となっており、スピードやヘディングでも引けを取っていない印象を受ける。実際にスイスリーグでやって感じたところはどうなのだろうか。グラスホッパーのクラブハウスで瀬古に直接話を聞いた。(取材・文=中野吉之伴/全2回の1回目)
◇ ◇ ◇
「正直に言うと、身体能力の差はありますね。足のリーチであったり、爆発的に初速が早い選手がいる。身体能力のところはこっちの方が圧倒的にあるなというのは思う。日本では守れていた部分も、リーチの長さとかでというのは、ここ数試合何回かあった。徐々にこっちに慣れてきてはいますけど、球際のところでは激しさがありますね」
瀬古は世代別の日本代表で何度も国際舞台を経験している。そこでの感覚を日本に持ち帰り、改善に取り組んだこともある。だが継続的に実戦で感じられなければ、その感覚を自分のものにするのは難しい。試合を重ねるたびに身に付くという感覚が必要だった。
「間合いを開けすぎるとダメ。プレッシャーを感じないんで、こっちの選手は。ちょっとの間合いでも『あ、打たれるんだ』というのがある。日本の間じゃなくて、こっちで考えた自分の間合いを見つけないといけない。こっちに来て勉強になった」
「こっちで考えた自分の間合い」。実際に試合ではどのようなプレーを見せているのだろう? 取材に訪れた第34節バーゼル(1-1)とのアウェー戦では強豪相手にクレバーなプレーを見せる瀬古がいた。
バーゼルには世界トップレベルのFWがいるわけではない。だが、マインツ、ホッフェンハイム、シャルケで活躍したハンガリー代表FWサライ・アーダーム、インテルからレンタル移籍中のイタリアU-21代表FWセバスティアーノ・エスポージト、同日クラブ史上最多記録となる454試合出場を果たした元スイス代表MFファビアン・フライといった曲者揃いだった。
「フィジカル部分はもちろん、駆け引きの部分、バイタルエリアの中での駆け引きっていうのは、やっぱり上手かったなっていうのは、やっていて思いました」
DFの位置を見ながら相手の背中側にスッと動いたり、裏に抜け出す動きをしながらサイドに抜けたりと絶えず駆け引きを仕掛けてくる。そうかと思うと、がっしりと相手を背負ってボールを引き出そうとする。そうした相手に瀬古はポジショニングや身体の向きを上手く修正しながら対応していた。
「3バック同士で声を掛けながらできていると思います。足が速い選手っていうのは分かっていたし、サイドに抜けてくるのは分かっていたので、いい準備ができていた」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。