3連覇を狙う川崎は本当に失速中なのか? 磐田戦に見た指揮官の”積極的采配”を紐解く
いくつかの並びを試行錯誤「タイミングや目を揃えることが大事」
主導権を握りながらも1点差が動かない。だが、そんな不安定な状況ながら、鬼木監督は活発に動いた。遠野に代えてマルシーニョを送ると、チャナティップはインサイドハーフに移動。後半26分には瀬古樹と塚川孝輝を、後半37分にはダリオ・シミッチとダミアンを送り込み、いくつかの配列を試した。指揮官は言う。
「バイタルエリアにボールは入っている。だからあとはタイミングや目を揃えることが大切になる」
先制ゴールも、高い位置を取った山根が大胆に裏を狙った動きが活路を開いた。
「もっと怖いところに人が入る。背後に走る。それをやっていかないと5バックにギャップが出来ない」
猛暑の中での連戦に突入するJリーグは、これから総合力の勝負になる。それを見越した準備に入っているようにも映る。
あとは「全員が自信を持って」がキーワードになっているが、それは最後のピースとも言えるジェジエウの復帰が叶えば「安定」を添えて解決するはずである。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。