鹿島FW上田綺世の“ハンド判定”は妥当? 元レフェリー・家本政明氏が見解「100%ボールに触れたとは言い切れない」
「J1リーグのカメラ台数は、海外に比べるとそれほど多くない」
「そうなると別のカメラアングルが欲しいという話になるんですが、それがあったのか、なかったのかという話で言うと分かりません。J1リーグのカメラ台数は、海外に比べるとそれほど多くないんです。ベストなアングルの方向、例えばバックスタンド側からの真横のアングルに関しては、おそらくないと思います。そうなると、確実に腕に当たったと言い切れる映像がない可能性がある。主審とVARがどのようなコミュニケーションを取ったのかは分かりませんが、そもそも、オンフィールド・レビューで見せたことが良かったのか、主審も見たのは良かったんでしょうけど、あの映像だけで確実に当たったと言い切って良かったのかは議論の余地があるというのが、個人的な見解です」
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この場合、レフェリーはどのような対処を施すべきだったのか。重要なポイントとして、家本氏は「その映像だけで、10人中9人が『ボールが手に当たった』と確実に確認できるような映像をもとに最終決断をすることが非常に重要」だと指摘。今回、VARから提示されたリプレー映像のみで真偽性を問われた場合、確証度は下がってしまう。そこですべてを判断してしまうことは、リスクがあるとしている。
「あの映像だけを見てはっきりと手に当たったと言えるのかと問われると、やはり厳しいと思います。そこで、他のアングルがないのかという問いが立つんですけど、ほかの映像でも不確定だとなると明白なハンドの反則があったとは言い切れない。僕がもし同じような状況でジャッジを担当したならば、ボールが手に当たった可能性は否めないものの、その事実を明確に映し出したものがないので、証拠不十分として得点を認めている可能性は高いですね」
VARを介したジャッジながらも議論に発展した今回のシーンは、レアケースといえるだけに「このあたりの見解については、DAZNさんの『ジャッジリプレー』で識者の方たちがどのような意見を述べてくれるのかも興味深いです」と、家本氏。他者による見解の行方にも注目していた。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。