J1清水、監督交代で白星再スタートも楽観視できない訳 「監督が替わって勝てるなら毎試合で替えた方がいい」の重み
クラブもチームも選手も変わらなければ、例年どおりのシーズン終盤を迎えることに
清水はここまで4シーズン連続で監督がシーズン途中で交代しているが、その交代した後の4試合は2021年が3勝1分、20年は3勝1敗、19年は2勝2分とそれまでの不調から脱出している。閉塞感から抜け出し、練習のやり方も変化。選手たちは新鮮な気持ちで試合にも臨めるということなのだろう。
ただ、試合後の囲み取材ではこの試合でもピンチを何度も防いだGK権田修一が「監督が替わって勝てるなら毎試合で替えた方がいい」と話し、全文掲載できないのは残念だが、5分間近く「『監督が替わったから』ではなく、自分たちがやらなければいけないという自覚を選手が持つことが大事」と力説した。また、DF原輝綺は今後について「どう変化するのかという楽しみもあるが、すぐに試合が来てしまう不安もある」と正直な気持ちを語っている。
確かにゼ・リカルド監督が現状のチームを見て強調した「球際」「切り替え」「インテンシティー」「コミュニケーション」「結束力」などは、前任監督をはじめ、これまで清水を指揮してきた監督が求めていたことと変わらない。毎年繰り返される課題を克服するためにクラブは創設30周年目のシーズンの途中から大きく舵を切り直し、新たなスタイルで活路を見出そうとしている。
ただし、クラブもチームも選手も自らが変わらなければ、また例年どおりのシーズン終盤を迎えることになるだろう。この日の勝利で失いかけていた自信は少し取り戻せたかもしれないが、後半のように今後の対戦相手が新戦術への対策をしてきた時にそれをどう乗り越えるのか。そして、この新鮮な気持ちをシーズン終了まで維持できるのかなど、楽観視できないのも事実。それでも次節から突入する後半戦の残り17試合でも後押しを続けてくれるサポーターの期待に今シーズンこそは応えてくれると信じている。
(Sの極み・下舘浩久 / Hirohisa Shimodate)
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。