日本にとって最大の脅威に? ドイツ代表、記録尽くしの19歳ヤングスターの驚くべき成長スピード
19歳とは思えぬ完成度 ミュラーは努力の姿を明かす
ドイツ代表では左サイドバック(SB)で起用されるダビッド・ラウムが非常に高い位置に立ち、ワイドな位置でパスの出口を作っているので、攻撃的MFはより自由に中央へとプレーエリアを広げていくことができる。自由といってもわがままにプレーをするわけではない。味方選手の動き出しや相手との兼ね合いをみながら、適切なポジショニングを探っていくことが求められる。ボールを失ったときにはすぐにバランスを考えて帰陣したり、ゲーゲンプレッシングに入ることを考慮した上であれば、左サイドで起用されながら右サイドにまで顔を出してパスの出口を作ったり、シュートに持ち込んでも問題にはならない。
19歳ながらすでにその完成度の高さに驚かされる選手だが、だからといって今が終着点ではない。バイエルンでも代表でも頼れる存在であるトーマス・ミュラーは次のように記者会見で話をしていたことがある。
「ボールを受けたときにどのようにその状況をかいくぐるのかについては話をする必要はないよね。数的不利な状況でボールを受けてもオフェンシブに運び出すことができる。自分が主導権を持ってプレーできるというのは大きな強みだ。でも世界のサッカーを見ると、まだ彼よりもシュートがうまかったり、パスに優れた選手というのは存在する。センタリングの質とか、ペナルティーエリア内に入り込む動きとか。そうしたFW的な要素に取り組んでいるよ。彼がトップチームに昇格してからいつも居残り練習をしているんだ。最初の年にはミロスラフ・クローゼがコーチでいたから彼と一緒にトレーニングしていた。まだ上手くできないことに彼はいつも真剣に取り組んでいるんだよ」
バイエルン監督ユリアン・ナーゲルスマンはムシアラのことを非常に高く評価しているし、「彼をメンバーから外すことは考えにくい」とさえ発言している。来季中盤から前線にかけてどのようなメンバー構成になるかわからないが、ムシアラは間違いなく、大事な戦力として起用法が考えられることだろう。それこそ試合を重ねるごとに成長していく年代だ。ここからの5か月間で想像以上の選手になってるなんてことは十分考えられる話だ。
日本代表とのグループリーグ初戦で、彼の名前がスタメンにあったとしても、それは不思議でも抜擢でも何でもない。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。