スタンドに現れた“山本雄大主審への横断幕” 湘南サポーターが伝えた素直な気持ち、Jリーグの“美しい風景”完成秘話

掲げられた横断幕【写真提供:高橋 修】
掲げられた横断幕【写真提供:高橋 修】

【Jサポーターの声#1】“誤審”から3年、湘南戦担当の山本主審へ横断幕…湘南サポーター・髙橋さんが語る作成経緯

 湘南ベルマーレがアウェーの地に乗り込んだ5月7日のJ1リーグ第12節アビスパ福岡戦、山本雄大主審が約3年ぶりに湘南の笛を担当した。湘南側のスタンドでは、山本主審へのメッセージ「山本さん、また会えてよかった!これからも共にJリーグを盛り上げましょう!」と書かれた横断幕が掲げられ話題に。

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 FOOTBALL ZONE編集部では、2010年より湘南サポーターとしてスタジアムへ足を運び、幕を作成した髙橋修さんに直撃インタビュー。約3年前の“ノーゴール判定”当時の心境から横断幕作成までの経緯を赤裸々に語ってもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 事の発端は2019年5月17日、J1リーグ第12節の浦和レッズ対湘南戦(2-3)で起こった“ノーゴール判定”だ。浦和が2点リードして迎えた前半31分、湘南のMF杉岡大暉のシュートが右ゴールポストを叩いて左サイドネットに吸い込まれる。しかし、この試合を裁いた山本主審はゴールを認めずにプレー続行を指示。湘南側が抗議も判定は覆らなかった。

 3年前のこの試合でアウェー側のスタンドから声援を送っていた髙橋さん。当時の印象を尋ねると「100%の状況は理解できていなかった」と話す。それでもピッチレベルの“猛抗議”の様子を見て、「入ったんだろうな。だけどたぶん、もう覆らない」と早々に悟ったという。

 湘南サポーターの雰囲気についても「ハーフタイムに入るタイミングは珍しくしっかりブーイングが起きていた」と騒然としたスタンドを振り返る。ただ、後半に入ると選手にも何か“スイッチ”が入ったのか、湘南が勢いを増し3点を奪って劇的逆転勝利した。サポーター側も後半からは切り替えていこうと、気持ちを新たに声援を送り、“勝利”という結果もあってか、スタンドの異様な雰囲気はそれ以上大きくならなかったようだ。

「正直言って、うち(湘南)が勝ったっていう結果(後半3点を奪い逆転勝利)があるのは大前提としてあるかなとは思っていて、今だから言えるんですけど『あの誤審がなかったら勝ててないよね』っていう話は正直よくしたりしてました。負けてたら……どうなっていたんですかね(笑)」

 当時の日本サッカー協会(JFA)は後日、この判定を「誤審」と認め、山本主審には2週間の公式戦割り当て停止の処分が下された。山本主審はその約1か月後、公務に復帰したが、対湘南の試合は今年5月の福岡戦まで約3年に渡って担当していなかった。

 迎えた2022年5月7日、アウェー福岡戦の試合前に、髙橋さんは約3年ぶりに山本主審が担当になったことを知る。髙橋さんら湘南サポーター団体は、前々から、山本主審へ向けた横断幕を出そうと考えていたというが、この試合で出せたのは“偶然”も重なった。

「いわゆる白い布にスプレーでばーっと書いていくっていうのは、アウェーに持っていくことは多くはなくて、タイミングが上手いことはまったというか。前の清水エスパルス戦(第11節/1-4)がホームで結構酷い試合だったのでそういうメッセージを書こうというのが元々そこにあって、白い布とスプレーを持って行った。そういう偶然もあったんです」

 さらに福岡のホーム・ベスト電器スタジアムでは横断幕の申請が必要だったようで、髙橋さんらはその点も「ぎりぎりでも大丈夫か」と確認。そこで許可が出ていなかったら横断幕は出せていなかった。

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