日本代表も見習う点が多い「弱者の戦い方」 イングランドに大勝のハンガリーが見せた洗練されたスタイル
洗練された守備のオーガナイズに加え、鋭いカウンターでゴールへ迫る
ハンガリーのシステムは3-4-2-1だが、実質的には5バックの5-2-2-1。引き込む守り方だが陣形はコンパクトで綺麗にゾーンを埋めている。相手が縦パスを入れても必ず背後からプレッシャーをかける。イングランド、ドイツ、イタリアはいずれもハンガリーの守備ブロックになかなか侵入できなかった。
ボールを奪う地点が自陣深くになることが多いので、カウンターアタックに転ずるのは難しいはずなのだが、1トップのアーダーム・サライが193センチの長身でリーチがあり、A・サライのキープ力を頼りに押し上げていく。簡単にロングボールで逃げることは少なく、ゴールキックはほぼ毎回近くにつないで再開していた。
中盤や敵陣で奪えた時のハーフカウンターは鋭い。ワンタッチパスを使いながら、あっという間にゴールへ迫る。個々の技術は高く、それ以上に運動量が素晴らしい。特に守備で誰もさぼらず、しかるべきポジション移動を遅滞なく行うのでコンパクトな守備ブロックを形成できている。
雑な言い方にはなるが、弱者の戦い方が上手いのだ。イタリア人のマルコ・ロッシ監督に率いられているせいか守備のオーガナイズが洗練されていて、攻撃の意欲も持っている。まさかこのグループで首位に出るとは思わなかったが、日本代表にも見習う点が多々あるチームだろう。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。