日本代表も見習う点が多い「弱者の戦い方」 イングランドに大勝のハンガリーが見せた洗練されたスタイル
【識者コラム】イングランドとの2戦目で4-0勝利、アウトサイダーのハンガリーが躍動
ハンガリー代表と言えば「マジック・マジャール」である。1950年から6年間に敗れたのは1回のみ、33連勝はいまだに破られておらず、史上最強のナショナルチームとも言われている。54年スイスワールドカップでは諸々の不運が重なって決勝で西ドイツに逆転負けを喫したが、フェレンツ・プスカシュなど名手を擁したハンガリーはさまざまな偉業を成し遂げた。しかし、それ以降のハンガリーは世界最強でも強豪でもなくなっていた。
今季のUEFAネーションズリーグ、ハンガリーは4試合を消化した時点でグループ首位に立っている。初戦はイングランドに1-0と勝利。実に62年以来だった。次のイタリア戦は1-2で敗れたが、ドイツに1-1、そしてイングランドとの2戦目はなんと4-0とアウェーで大勝だった。
ハンガリーは完全にアウトサイダーと見られていた。欧州王者のイタリア、そのイタリアと決勝を戦ったイングランド、さらにハンジ・フリック監督の下に再生したドイツのいるグループに放り込まれたのだから無理もない。
思えばEURO2020(2021年に開催)でも組分けは最悪だった。前回王者のポルトガルにロシア・ワールドカップ(W杯)優勝のフランス、さらにドイツ。ポルトガルには終盤に3失点して0-3で敗れたが、フランスに1-1、ドイツに2-2。グループリーグ通過はならなかったものの大健闘だった。
カタールW杯にハンガリーは出場できない。欧州予選グループIの4位に終わっている。1位通過のイングランドに1分1敗、2位のポーランドには1勝1分だったが、アルバニアに2敗したのが響いた。これで9大会連続の予選敗退である。
強いのか弱いのかよく分からない戦績なのだが、どうも強い相手には強いという傾向がある。プレースタイルからしてもそうなのだ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。