得点数が半減、失点数は過去2シーズン超え… J1王者・川崎に今、何が起きているのか

止める・蹴るなどのプレーの質でリーグを牽引してきたが…

 さらに過去2シーズンを費やして川崎のスタイルに他チームが追いついてきたという側面も指摘しておきたい。

 その一つが20年シーズンを起点に川崎が新たに採用した4-3-3であろう。3連覇を狙った2019年のJリーグを制したのは4-3-3の横浜FMで、欧州複数の強豪クラブも4-3-3を使いこなしていた。そうした状況を把握していた鬼木達監督が王座奪還の切り札として4-3-3に取り組み、これを使いこなすこととなった。

 また、川崎が新システムを採用したタイミングで、レフェリングの基準が変更されている。原博実Jリーグ副理事長(当時)が旗を振り、審判部を巻き込んで、激しくて、フェアで、エキサイティングなリーグを目指し、高強度の競り合いが推奨されるようになった。

 鬼木監督就任以降の反則ポイントは、2017年が6位、18年が9位、19年は7位だった。それが基準が変わった20年に圧倒的なポイントの少なさで2位になり、21年には1位になっている。これは川崎が変わったのではなく、基準が変わったからだと解釈すべきだ。

■直近の反則ポイント
2017年 6位 退場1(警告2枚)
18年  9位 退場2(警告2枚/1、レッド/1)
19年 7位 退場1(警告2枚)
20年 2位 退場1(レッド)
21年 1位 退場ゼロ
22年 12位 退場1(レッド)(※シーズン中)

 4-3-3のメリットの一つは、中盤を3枚で守ることで攻撃時に前線の3枚をゴール前に配置できる部分にある。つまり、より高い位置に選手を残しつつ、高強度の競り合いで奪ったボールを相手ゴール前にすぐに運べたのだ。

 止める・蹴るなどのプレーの質でもリーグを牽引していた川崎に対し、リーグ全体が2シーズンを費やし、合わせてきたということが言えるのだろうと考えている。

 選手の海外移籍もありこの現状を劇的に覆すのは簡単ではないだろう。ただ、大卒で即戦力クラスの選手が取れるようになっており、また負傷していたチャナティップや、大島僚太といった選手たちが6月18日の北海道コンサドーレ札幌戦から戦線に復帰する準備を整えている。

 そして一番大きいのは、チームの結束が失われていないということ。失速気味に見えるが、それは逆に言うと伸びしろでもある。ACL(AFCチャンピオンズリーグ)の敗退は残念だが、3連覇に向けたここからの巻き返しを期待したい。

(江藤高志 / Takashi Eto)

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江藤高志

えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。

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