得点数が半減、失点数は過去2シーズン超え… J1王者・川崎に今、何が起きているのか
【J番記者コラム】今季リーグ戦で失速、川崎の現状を考察
J1リーグ3連覇を狙う川崎フロンターレが厳しい戦いを強いられている。16試合を消化した今季のリーグ戦では、9勝3分4敗の3位(勝ち点30)に。首位の横浜F・マリノスとの勝ち点差は1に過ぎないため巻き返しの可能性は十分ながらも、連覇を果たした直近2シーズンの勢いは失われている。
改めて振り返ると、王座を奪還した2020年、連覇した21年シーズンの川崎はとてつもない強さを誇っていた。リーグ戦16試合終了時点での勝利数を見ると、20年、21年は13勝を達成。今季の敗戦数においては、年間3敗の20年、同2敗の21年をすでに超えてしまった。
■直近3シーズン16試合消化時点のリーグ戦績
2020年 16試合 13勝2分1敗 47得点15失点
2021年 16試合 13勝3分0敗 41得点12失点
2022年 16試合 9勝3分4敗 20得点17失点
この苦戦の原因の一つは得点力の低下にある。16試合終了時点で、20年が47得点、21年が41得点に到達している一方、今季は20得点と得点数がおよそ2分の1に半減。また失点も過去2シーズンを超えており、攻守でバランスが崩れていることが分かる。
ここ数年の変化で言えば、代表クラスと言われる複数選手の海外移籍や現役引退が相次いだ。“レジェンド”の中村憲剛が20年シーズンを最後に現役引退。そのシーズンオフに守田英正が海外移籍(サンタ・クララ)を決断した。
さらに、21年シーズンには田中碧がドイツ(デュッセルドルフ)へ。東京五輪後には三笘薫がイングランドのブライトンへ完全移籍したうえで、ベルギー(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)へ移籍。同シーズン後に、旗手怜央がスコットランド(セルティック)へと渡った。現役バリバリの代表クラス4選手に中村を加えた5選手が五月雨式にチームを去ったことの影響は見逃せない。
チームはもちろん21年、22年シーズンを前に補強は進めている。守田の穴こそ21年の大卒ルーキー橘田健人である程度カバーできているが、田中、旗手が攻守で見せてきた高い貢献度はそう簡単に穴埋めできるものではない。
中村の修正力も失われ、そしてなによりも三笘が抜けた左ウイングの人材難に苦しめられている。ここに列挙した各選手が日本代表クラスの実力者であることを考えても、その穴を埋めるのは容易いことではないのは理解してもらえるはずだ。
江藤高志
えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。