森保J、ファインダー越しからも明白だった「逃げのボール回し」 チュニジア相手に見えた限界…W杯へ指揮官はどう立て直すのか

W杯出場国チュニジア相手に個の突破に頼った攻撃が通用せず…

 森保ジャパンにとって集大成となるワールドカップ(W杯)を5か月後に迎えようとしている今、森保一監督がチームを指揮するようになった当初から現在ではチームスタイルにも変化が見られる。

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 かつては相手の守備網を完全に崩そうとするテクニカルなサッカーを見せていたが、現在はボールを奪ってからの手数をかけないスピーディーなサッカーへとシフトチェンジしてきている。このスタイルの利点は手数をかけなければミスの確率も減り、スピードある攻撃は相手守備網が整う前へゴールへと迫ることになり、得点力アップに繋がった。

 ただ、ブラジル戦に続き今回のチュニジアのような強力なディフェンス網を敷くチームとの対戦では、選手の個人能力の突破に頼ったものでは限界があることを露呈した。ブラジルのようなスーパースター軍団と比較して、くみしやすいチュニジアに対しても通用しなかったのだ。

 この限界への打破には今のスタイルを目指すにようになった経緯が大いに関係してくる。森保監督が率いる日本を評する時、戦術=ドリブルを得意とし、状況を単独で打開できる選手の個人名が挙げられることがある。そして、このスピードサッカーへの変化が指揮官によるものではなく、勝利するための手段を思考した結果、選手からの芽生えによって導き出され、彼ら主導によってもたらされたものであるとしたら、個人能力に限界があることを思い知らされたチュニジア戦の敗戦は重大な欠点を露呈したことになる。

 しかし、指揮官の意思変更によるものであるなら、個人の能力を補う戦術としての動きも加えることができ、改善が見込まれる。現段階では戦術としての動きは強く見受けられないが、その必要性を指揮官が理解していれば、好転へのチャンスは残されている。

 森保ジャパンの集大成となるW杯カタール大会で対戦するのは、その実力を説明するまでもない強豪国のドイツとスペインだ。攻守に渡って劣勢の展開が予想される。得点のチャンスもそれほど多く作れるとは考えにくい。

 個で勝る相手に組織的な守備で対抗することは大前提である。そして得点への重要なポイントとなるのは、組織としてチャンスを作り、決定機を決め切る個人能力だ。個人能力とチーム力を上手く融合させることがカギとなる。チュニジア戦の敗戦は指揮官の明確な采配が求められる教訓となったが、森保監督はこの敗戦を受けてどう立て直していくのか。雨降って地固まるとなるか。今後の指揮官の手腕が注目される。

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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