ACミラン再生の象徴「カーサ・ミラン」 名門が世界に誇る革新的オフィスの全貌を探る

「ベルルスコーニ一族はサッカー界を革新しようとしている」

 

 さて、バルバラが強気に主張するように、カーサ・ミランはミラン復活を象徴するフラッグシップに成り得る建築物なのだろうか。

 その答えは「Si」だ。これほどまでにエッジの効いたクリエーティブな建造物は、サッカー界に存在しただろうか。誰もが楽しめ、感動できるようなもてなしの空間がそこにはある。筆者にとっても初体験の世界が広がっていた。

 ここには最先端テクノロジーを駆使し、大人も子どもも楽しめる、驚きの表現空間が広がっている。人は未体験の表現方法に興味を持ち、圧倒される。長年テレビ局を保有し、映像技術の開発に敏感なベルルスコーニ一族ならでは発信装置だ。

 それを形にしたのは、デザインの国でも高名な建築家ファビオ・ノヴェンブレ。66年10月21日生まれの48歳。レッチェ出身の彼は、全身赤のミランカラーのスーツを着て記者会見に登場すると、全身から異彩なオーラを放っていた。

 彼は84年、イタリア南部からミラノへと出た。留学先のニューヨーク大学では映画監督科を専攻し、映像の勉強中だった01年に、ミラノの人気クラブDIVINAを建設。09年には、ミラノトリエンナーレでデザイン美術館“ノヴェンブレの華”を発表し、10年の上海エクスポではイタリア館を担当した。ノヴェンブレは晴れ舞台でも雄弁だった。

「ベルルスコーニ一族は、サッカー界を革新しようとしている。この出会い、そして集中を研ぎ澄ませた仕事は、全てが素晴らしかった。私はデザインやファッションの世界にいた人間だったので、そちらの世界にも敏感だ。彼らも理解があったので、素晴らしい仕事ができた」

 バルバラCEOとイタリア建築界の鬼才が胸を張るほど、カーサはディテールの出来栄えも素晴らしい。ある空間では暗闇にレジェンドが浮かび上がる。元ブラジル代表カカやバルバラが立体映像で登場し、ミランシアターへと誘う。別の空間ではサポーターが好きな年代の映像を楽しめる。トロフィーが陳列された天井の上にも歓喜のシーンが映し出され、感動を呼ぶ。

 多忙の中、ミラネッロに常にヘリコプターで降り立つベルスコーニ会長を象徴するような、巨大なヘリのオブジェがひときわ目を引くような部屋もある。

 

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