「受けて立たない」王国ブラジルの姿に驚き、サッカー大国が様変わり…十数年ぶりの練習風景から見えた大きな変化

手堅さとシステム重視の時代の潮流を理解するチッチ監督率いるセレソン

 かつてのブラジルは相手がどう来るかなど二の次で、自らが得意としているスタイルを前面に出して戦うのが常だった。練習もそれに倣ったものになり、自分たちのリズムを作ることを第一としていた。

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 しかし、もはや大国ブラジルといえども胸を出して「さあ来い!」と受けて立つサッカーで勝負をしようとは考えていないのだ。スーパーテクニシャンたちによる前線からの守備、そして攻撃に転じれば一気に攻め落とすという相手にサッカーをさせない戦いを、格下と考えられる日本に対してでも行おうとしていた。

 チームとして前線から守備を行う練習は世界の潮流からすれば当然だが、それはサッカーシーンをリードするブラジルでも例外ではないのだということを実際に目にして改めて思い知ったのだった。

 チッチが指揮するブラジルは手堅く、そしてしたたかだ。それだけに圧倒的にボールを支配しても最終局面を崩せずカウンターから失点し敗戦というブラジルの悪い癖が出ることも少ないように思えた。日本が付け入る隙もなく、ゆえにゴールするのは難しいと感じたのだ。

 2002年の日韓W杯で優勝を果たしたルイス・フェリペ・スコラリ監督同様に、サンパウロ州やリオデジャネイロ州のテクニックを重視するクラブとは異なり、パワーサッカーを得意とするグレミオでの成功で名を知られるようになったチッチは元々、シンプルで手堅いサッカーを信条としている。

 そうした手堅さとシステム重視の時代の潮流を理解し、現代サッカーの最高傑作の1人として数えられるネイマールをはじめ、ハイレベルな選手たちが揃うセレソンを率いるチッチ。アジアツアーに連勝した彼を先導者とするカナリアは、カタールの地で最も高い頂を目指して飛行を続けている。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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