本気のブラジルが見せた「日本の心臓潰し」 日本代表OBも驚愕「今の日本はそこを封じられると厳しい」
【専門家の目|金田喜稔】W杯さながらのスカウティング「遠藤をかなり分析していた」
森保一監督率いる日本代表は、6月6日に国立競技場で行われたキリンチャレンジカップのブラジル戦で0-1と敗れた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、FIFAランキング1位のブラジルが同23位の日本に対してワールドカップ(W杯)のようなスカウティングを見せ、「遠藤潰しを実践していた」と指摘。本気モードだったカナリア軍団に驚きを露わにしている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
◇ ◇ ◇
ブラジルはFWネイマール(パリ・サンジェルマン/PSG)、FWヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)、MFカゼミーロ(レアル)、DFマルキーニョス(PSG)やDFエデル・ミリトン(レアル)ら主力クラスが先発。11月のカタールW杯を見据えた豪華メンバーがスタメンに並び、序盤から日本を押し込んでいく。一方の日本は後手を踏む形で受けに回り、粘り強い守備で凌ぎ続けていたが、後半32分のPKをネイマールに決められて0-1で敗れた。
試合を振り返った金田氏は「遠藤が素早く囲まれるシーンが何度もあった」と指摘。4-3-3で中盤の底に入ったMF遠藤航(シュツットガルト)は森保ジャパンに不可欠な存在であり、攻守の舵取り役も担う。「ブラジルは、日本の心臓である遠藤をかなり分析し、遠藤潰しを実践していた」と語り、次のように続けている。
「ネイマールや(ルーカス・)パケタらは、かなり遠藤を意識していた。ある程度、吉田(麻也)と板倉(滉)をフリーにさせても、遠藤にボールをできるだけ入れさせないようにしていた。攻撃のスイッチとなる遠藤からのパスを封じるため、そもそも遠藤が機能しない戦い方を意図的にやっていた」
この試合、スコアは0-1と僅差ながら、シュート数は日本の4本に対してブラジルが18本。枠内シュート数は日本の0本に対してブラジルが12本。サッカー王国が豪華タレントを送り出してきたなか、ホームの日本は粘り強い守備を見せたものの、攻撃における迫力不足は一目瞭然だった。
金田氏は「今の日本は、そこ(遠藤)を封じられると、かなり厳しい。FIFAランク1位のブラジルが、日本(同23位)のストロングポイントを分析し、遠藤潰しを重視した」と言及。さらに驚きを露わにしたのは、「日本とただの調整試合をするのではなく、本番さながらにスカウティングし、戦術を練り、試合に臨んでいた」というブラジルの本気度だ。
「能力の高い個人が集まっただけの集団ではない。ブラジルがチームとしてどこをケアしているのか、どこを起点に攻めるのか。スター軍団に規律を持ち込んでいるチッチ監督の手腕は目を見張るものがあり、素晴らしいチームであると立ち上がりから強く感じた」
ブラジルの“遠藤潰し”によって課題が浮き彫りになった形の日本だが、「ブラジルがここまで本気モードで戦ってくれたのは、W杯を考えた時に日本にとってプラス」と金田氏は現状を前向きに捉えていた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。