J1清水、事実上の“監督解任”に踏み切った訳 崩れたプラン、選手たちの中で生まれた「迷い」
ある意味驚きの新監督を迎え入れるという「大勝負」に出ることも
選手も昨シーズンのロティーナ監督の戦術から解放され、GK権田修一キャプテンは「去年のこの時期よりは間違いなく選手たちは迷いなくサッカーをやっている」とコメント。当初の狙いである「負けを引き分けに、引き分けを勝ちに」という戦いができずに、試合数をこなすにつれて逆の展開が増え、勝ち点を積み重ねることができずにいると、選手たちの中に昨年とは別の「迷い」が生まれ、消極的なプレーが目立つようになりチームは勝利から見放された。
クラブの公式会見がないためにその契約解除理由は不明だが、平岡監督の理想としていた「攻守で主導権を握るサッカー」はその完成形を見ることはなく、2勝7分7敗の勝ち点13でシーズンの折り返しを待たずにJ1ではヴィッセル神戸(2017~2020)に並ぶ4年連続でシーズン途中での監督交代。そのバトンは19年にもヤン・ヨンソン監督のシーズン中の退任を受けて監督に就任した篠田善之ヘッドコーチが引き継ぐことになった。
就任3日目で迎えた天皇杯2回戦では周南公立大学と対戦。難しい天皇杯初戦を8-0と圧勝し、監督交代のショックを払拭して見せた。しかし、その篠田監督も「暫定」となり、新監督の発表を控えるなか、クラブは残り18試合で新監督に何を託すのか。
当初の目標の「タイトル獲得、ACL出場圏内」なのか、現実的に「1つでも上位」なのか、それとも「残留」なのか。招聘した監督によってそれは明らかになるが、この4シーズンの反省からこれまでとはまったく違うサッカーを目指して、たとえ今シーズンに何が起ころうと一からチームを作り直すということで、ある意味驚きの新監督を迎え入れるという「大勝負」に出ることも考えられる。
どちらにせよ、この3年間の降格危機を救った「残留請負人」の2枚のカードは残っていないが、創設30周年記念のシーズンの残り半年でクラブはその覚悟を見せてくれるだろう。
(Sの極み・下舘浩久 / Hirohisa Shimodate)
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。