デュッセルドルフ内野貴史、驚きのU-21日本代表選出…「嘘?」の舞台裏 大岩監督から直電「招集するよ」…親友と再会の夢物語
欧州に渡った2人が毎日のようにビデオ通話…励まし合った親友と「代表で会えた」
U-21日本代表では、これまで願ってもやまない再会を果たすことができた。ポルトガルのベンフィカでプレーしているGK小久保玲央ブライアンとは日本にいる時から仲が良く、欧州に渡ったタイミングも一緒。毎日のようにビデオ通話をして、お互いの境遇を話し、励まし合ってきたという。
「それこそ励まし合いながら過ごしていたんです。代表シーズンの時にあいつは呼ばれているから『代表で日本帰れるかも』みたいな話を聞いて、『いいなぁ』って思ったりすることもあったかな。いつか代表とかで一緒に会いたいなぁって話をしていて。それで代表で会えたから。ブライアンが代表にいてくれたから、孤立している感覚もなかったし、みんなも優しかった。嫌な緊張とかはなかったです。自分のプレーをすることだけに集中して、ピッチ外でのストレスはまったくなくやれたんです」
18歳の時、Jクラブから声はかからなかった。だが、絶対にプロになりたいと誓い、自分の可能性を信じてドイツへ渡った。幾多のチャンスをものにしてデュッセルドルフへとたどり着き、トップチームでデビューを果たし、さらにはU-21日本代表にも招集された。これだけでも夢物語と言えるものだろう。だが、内野のゴールはここではない。
「ここで止まった意味がないので、今までどおり、これまで以上の努力をしていかないと。レベルが上がるにつれて、甘い世界じゃないというのは分かっている。自分の感覚では、満足しているとかは本当になくて、逆に欲が出てきている。代表に1度呼ばれたから、ずっと選ばれたい。次も呼ばれたいという思いが出てきて、それが普段のトレーニングの姿勢にもつながって。また1つ成長する機会をもらえたのかなと。選ばれてサッカーをしただけじゃなくて、日頃の意識が変わってきていると思っています。未来のことはどうなるか分からないですけど、自分に期待してやっています」
ウズベキスタンで開催されるU-23アジアカップでU-21日本代表入り。デュッセルドルフでも来季はトップチームでの出場機会が増えていくのではと期待されている。だからといってやることは変わらない。いつでもどこでも100%の力でプレー。
そんな内野のこれまでと今、そしてこれからに注目してもらいたい。
[プロフィール]
内野貴史(うちの・たかし)/2001年3月7日生まれ、千葉県出身。新松戸SC―柏U-12―千葉U-15―千葉U-18―FCデューレン―アレマニア・アーヘン―デュッセルドルフ(いずれもドイツ)。ドイツ5部のデューレン、4部のアレマニア・アーヘンを経て、21年にデュッセルドルフのセカンドチームに加入。22年3月12日の26節パーダーボルン戦、コロナで離脱者が続出したなかで念願のトップチームデビューを飾った。同年6月のU-23アジアカップに臨むU-21日本代表メンバーに選出された。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。