インテンシティーって何? U-21日本代表DF内野貴史、ドイツで感じた“プレー基準”の違いに衝撃「止まって受けたら絶対取られる」
走る数値だけではない“インテンシティー”「オレもびっくりして、今までなかった」
プレーするための時間をボールが来る前に自分でどうやって作るかで、できるプレーが大きく変わってくる。そのために何をすべきかを考え続けてプレーするから頭が休まる間もない。周りの選手はそのあたりの情報処理能力が高いので、すぐに次のプレーへと移っていくなか、自分のところでどうしてもテンポが遅くなっていることを感じたそうだ。
「大げさではなく、試合中の90分間、休む時間が本当に1秒もない。例えば1試合の走行距離ってデータで出してもらえるんですけど、普段の4部での試合の方が2部でのデビュー戦より走ってたんですよ。でもデビュー戦は58分で足をつっていました。オレもびっくりして、そんなこと今までなかったし、90分間走り切れる自信はあったので。15キロくらい走ったのかなと思ったら、数値は11キロちょっととか、いつもどおり。常にインテンシティーというか、ずっと頭を動かして、足を動かして、少しずつポジションを変えてプレーをしていたら、そこまで負担になっていたんだなって思いました」
インテンシティーとは走る数値からだけでは測れないものがあるのだ。いつ、どこで、何を、どのように判断し、決断し、実践したのか。ハイプレッシャー下でもプレー精度を高めるためには局所的な打開力だけではなく、全体的な状況判断と優先順位のつけ方が必要になる。
「最近、自分の中で掴めている、掴めてきているものはあります。例えばセカンドチームだったら、自陣でボールを持ってる時はそこまで考えずに、センターバックからボールを受けて、パスをつけてそれから走るという感じなんですけど、トップチームだといつも同じ場所にいたら取られちゃうんで、たまにボランチの位置に入っていったり、高い位置に行ってボランチが俺の位置に入ってきたりとか。そういうのを常に、周りを見ながら、それでいてなおかつ自分もボールを受けられるような準備で、ボールを見ながらでやっているので、疲れるんです(苦笑)。休む時間が本当にないですね」
環境は人を育てるというが、そうしたなかで考えて、取り組んでプレーし続けることで、少しずつ確信を持ってプレーができてきているという実感が生まれていく。とはいえ要求されるものが高すぎたら、選手には負担にしかならない。正しく努力すれば掴めるようになるというだけのものを、それまでに培ってきたからこそ、次のステップにもいけるのだ。早ければ早いほうがいいのではない。選手それぞれに合った成長のためのチャレンジのタイミングがあるのではないだろうか。内野の話からはそんなことを考えさせられる。
※第4回に続く
[プロフィール]
内野貴史(うちの・たかし)/2001年3月7日生まれ、千葉県出身。新松戸SC―柏U-12―千葉U-15―千葉U-18―FCデューレン―アレマニア・アーヘン―デュッセルドルフ(いずれもドイツ)。ドイツ5部のデューレン、4部のアレマニア・アーヘンを経て、21年にデュッセルドルフのセカンドチームに加入。22年3月12日の26節パーダーボルン戦、コロナで離脱者が続出したなかで念願のトップチームデビューを飾った。同年6月のU-23アジアカップに臨むU-21日本代表メンバーに選出された。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。