審判員勇退の家本政明が伝えたいコト Jリーグの価値と魅力を高めるNEXTチャレンジ

可視化を意識したことで生まれた「判定ボード」

――「ファウルかフリーキック(ファウル)か」「フリーキックかイエローカードか」「イエローカードかレッドカードか」などを可視化した「判定ボード」は非常に分かりやすく、好評でした。「判定ボード」誕生エピソードはありますか?

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「人間は視覚から入ってくる情報をすごく大事にします。ルールのことをあまり知らない子供たちでも分かるような表現を用いたツールアイテムはできないかと昔から思っていました。項目内の比率があるだけで、口で言うよりもいいかもしれない。もともとレフェリー時代からやっていたので、形にしてみたらすごく好評で、(『Jリーグジャッジリプレイ』の)制作チームからも『使いましょう!』と言っていただきました。見やすい、分かりやすい、理解しやすい、共通認識のきっかけになると思って使っていますし、競技規則のアニメ化もいつかできたらいいなと考えています」

――「Jリーグジャッジリプレイ」に携わるうえで、悩みや改善点はありますか?

「取り扱えない事象も数多くあることですかね。全部を取り扱えたほうがいいですが、番組の制作・構成において、どこまでカバーするのかは非常に難しいところです。2時間の特番が組めるくらいの時もありますし、こぼれた中でも議論したほうがいいものもある。ただ、持ち越してしまうと時間差的に違和感が生じてしまう。『Jリーグジャッジリプレイ』の中でやるのか、Jリーグとして補足コンテンツを設けるのか。僕個人でやる場合は映像を使えないのが難点です。これはフットボールの壁でもあるし、フットボールを楽しもうとしている“予備軍”の方たちのことも考えていきたいと思っています」

――今シーズン開幕当初、Jリーグでは例年よりも退場者が多く、レフェリングについて多くの意見が飛び交いました。家本さんの目には、イエローカード、レッドカードの提示を含めたここまでの判定基準はどのように映っていますが?

「正直に言えば、『まだ馴染んでいない』というところでしょうか。Jリーグは激しくて、フェアでエキサイティングな試合にしたいという前提がある。一方で、審判委員会は選手の安全に配慮するような、選手生命を脅かすような危険なプレーは徹底的に排除しようと。両者の掲げているテーマはリンクしている反面、完全一致はしていないのが現状です。そのなかで、レフェリー側が安全性に関して少し過剰に捉えている気がして、ファウルを吹かない人、やたら試合を止めてしまう人と両極端に分かれている。レフェリーは選手とは違い、公式戦が本番であり、同時に練習の場。この仕組み上の問題が解決しないと、3~5月あたりはレフェリー自身が感覚的にゲームに馴染めず、バタバタしてしまいます。

 トータルで見たら徐々に落ち着いてくると思いますが、イエローカード、レッドカードが多いのは、まず選手がそれに該当するようなプレーをするから。特に、近年は足の裏を向けていたり、危険なプレーが多いので、選手サイド、チームサイドがもっと気を付けないといけない。もちろんレフェリーサイドもコミュニケーションを取ったり、できることはあるはずです。昨年限りで僕や村上(伸次)さんが勇退されて、トップレフェリーを入れ替えしていかないといけない状況で、そのチャレンジが昨年くらいから始まっています。能力的、キャリア的にも若いレフェリーが多くなっている分、ミスマッチが起こってギクシャク感がある。致し方ないと言えば致し方ないですが、レフェリー側のスキルアップ、育成の仕組みを作っていくことが大事だと思います」

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