審判員勇退の家本政明が伝えたいコト Jリーグの価値と魅力を高めるNEXTチャレンジ
競技規則と“現場感”の両方を踏まえた論点を意識
――元審判員だったからこそ、「Jリーグジャッジリプレイ」を配信する意義を一層感じることがあるのでは?
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「僕はポジティブに捉えています。現場で判断したことが、映像で見たら違うというシチュエーションは当然あって、その事実をオープンに世の中に投げかけていくことも大切だと思います。意見や考え方の相違が生じるのもフットボールですから。レフェリーが意見をきちんと言える場があることは、公平性、健全性を考えると必要で、ヨーロッパでは結構行われています。世の中がテクノロジー、情報化社会となっている以上、情報を隠すことはネガティブに捉えられてしまう。できるだけ早く生の声を届けるほうが、理解、信頼感、安心感につながると思います。ただ、僕の意見は絶対的な正解でもなんでもなくて、現役のレフェリーがそこに引っ張られ過ぎるのも違うし、もしかしたら改善や成長へのきっかけやヒントがあるかもしれない。そこは公平に見てもらえたらと思います」
――家本さんは審判員だった2021年、「Jリーグジャッジリプレイ」に関して「審判がなぜ現場でそう思ったかも見てほしい」とツイートされていました。検証するにあたって気を付けていることはありますか?
「昨年までは“現場感”をあまり感じられなかったというのが正直な感想でした。競技規則がありながらも、現場のこの状況下だったらそう判断するのは無理じゃないか、という発言も少なからず聞きました。それは言い訳ではなく、現場の環境、見たことも1つの事実だと分かっていただきたい。本当は判定を下したレフェリー本人が届けたほうがいいですけど、越えなければいけない壁、解決しなければいけない問題があるので、僕の経験談として届けているつもりです」
――取り上げるシーンが決まったあとはどのようにアプローチをしていますか?
「この問題をどういう風に届けるのが、ファン・サポーターの方、選手たちの納得につながるのか。自分の中で論点を2、3個出して、そこに行きつく説明を考えています。(元国際審判員の)深野悦子さんは指導者、競技規則を踏まえたニュートラルなポジション。僕はわりとレフェリーのことも言いたいので、あえて色を変えているところはあります」
――「Jリーグジャッジリプレイ」がファン・サポーターなどに認知されたことも追い風となって、今年は「DOGSO」(Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity/決定的な得点機会の阻止の意)のフレーズが広まるなど、番組配信の効果が窺えます。
「理解、浸透していくうえで、ステップがあると思います。まずは分かりやすさ。そしてきっかけや話題性です。例えば『DOGSO』で言うと、4~5つある判断項目の可視化がされていませんでした。サッカーの世界は結果的に白黒がつきますが、その一歩前の判断においては、『どちらとも言える』状況が多々あるわけで、それを知っていただけるように、可視化して深掘りしながら発信しています。人の心、意識をいかに捕まえられるか。トレンドになるようなキャッチーなワードは大事だと思います」