闘莉王、水分補給禁止の経験から訴える「線引き」の重要さ 育成年代の暴力問題を考える「すごく苦しいこと」

元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏【写真:荒川祐史】
元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏【写真:荒川祐史】

【独占インタビュー】秀岳館サッカー部内での暴力行為から改めて指導、教育について熱弁

 熊本県の秀岳館高校サッカー部で、30代の男性コーチが部員に暴力を加える映像が拡散したことを発端に、部員が謝罪動画をSNSへアップする事態に発展した一連の騒動が物議を醸している。元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、FOOTBALL ZONEのインタビューに応じ、自身の経験を語りつつ、“線引き”の重要さを熱弁。プロを目指すうえで、中学から高校にかけた育成年代での指導で大切なことも明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 問題となっていた秀岳館の暴力問題は、サッカー部の男性コーチが暴力を加える映像がSNS上で拡散したことから、部の公式ツイッターが、部員が複数人並んで謝罪する動画をアップ。動画は削除されたが、当初動画と関係ないとされていた段原一詞監督が関与していたことが分かり、暴力もサッカー部内コーチから部員には計25件あったことが明らかとなった。

 この問題をきっかけに、育成年代の指導を見直す動きが高まっているなか、闘莉王氏は自身の渋谷幕張高校時代の経験を振り返った。

「暑いときに水を飲みたいけど、練習が終わっていないから水飲んじゃいけないと言われたりもした。これはすごく苦しいこと。1人のミスによって全体で走らされたこともあった。ただ、逆に考えると、これをバツと考えるのかチームとして成り立つために、と考えるのか。その一線は難しい。この『厳しさ』が嫌だったこともあれば、勉強になったこともある。だからすごくその線の見分け方は難しい」

 指導者として暴力・暴言行為は絶対に越えてはいけない一線。そのうえで、サッカーは特にチームスポーツとしての人間的な「教育」には力を入れなければいけない。強豪校では将来、プロを目指す選手も多い。プロの舞台で戦えるようになるためには、選手としての器や、芯がないといけない。これを身につけさせるのが育成年代だ。

「ベースとして芯のある選手になるには、指導者としてもある程度のプロの厳しさを耐えるための忍耐力を身につけさせなければいけない。その『厳しさ』をどうやって伝えるのか、が一番難しい。プロに入っても、その選手に芯がないといくら才能があってもやっていけない。人間としてベースがないとプロにいっても成り立たない。問題が起きた時、ぶつかったときにもう1回這い上がるための強さが自分にないと、解決方法は誰も教えてくれない。これは中学から高校の年代で身につけないといけない。どうやって身につけれるか。線を越えちゃいけないけど、教えないといけない。だから育成年代はすごく重要。絶対に言えるのは、一線は越えちゃいけないということ」

 闘莉王氏自身、現役時代は熱くなることもあった。だが、いい選手であるために、芯がブレてはいけないと言い聞かせてきた。指導者も絶対に越えてはいけない線を自身に刻み込まなければいけない。闘莉王氏の言葉には終始、強い願いが込められているようだった。

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