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原口元気、大躍進ウニオン・ベルリンで本格派MFに成長 ベンチの“葛藤”を乗り越え欠かせない存在へ「もう1個先に」
【ドイツ発コラム】原口、5位でフィニッシュのウニオンで「フォア・ザ・チーム」を徹底
ブンデスリーガ第32節終了時で6位につけていたウニオン・ベルリンは第33節で4位フライブルクとのアウェー戦に臨んだ。接戦が予想された試合だったが、前半ウニオンが素晴らしいプレーの連続で次々にゴールを奪い、4-1で今季センセーショナルなシーズンを戦っていたフライブルクを退けた。そしてそのウニオンで非常に効果的なプレーで勝利に貢献したのが日本代表MF原口元気だった。
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この日、右インサイドハーフでの出場となった原口が対峙した相手左サイドバック(SB)はドイツ代表候補のクリスティアン・ギュンターで左センターバック(CB)はニコ・シュロッターベック。フライブルクの攻撃はこの2人と左ハーフのビンチェンツォ・グリフォとで起点が作られる。彼ら3人に自由にプレーをさせないことが試合の流れをつかむうえで非常に有用だったわけだが、原口は的確なポジショニングと出足の鋭さでチャンスを許さない。
前半17分にはハイボールの競り合いでグリフォを倒してファウル。だが、必要な激しさだ。笛で試合が止まると、コーチが外から指示を出すことがあるが、原口は素早くコミュニケーションをとって修正していく。意図を理解するのは当たり前に大事。出足の鋭さと運動量は以前からの強みではあったが、ここ最近はさらにどっしりしてきている印象だ。あたっても軸がブレないのだ。後半20分に交代するまで、チームのために戦い続けた。
見事なパフォーマンスを見せたチームにウニオンのウルス・フィッシャー監督も満足げだった。
「幸せで誇りに思う。2度目のUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場を決定づけた。今日はほぼ不可能だと思われるフライブルクで4-1という勝利を挙げることができた。1週間前の結果にはがっかりしていたが(最下位グロイター・フュルト相手にホームで1-1引き分け)、サッカーはそれだけ早くいろんなことが起こる。だから集中して次の試合に臨む」
最終節ボーフム戦でも原口が魅せる。開始直後、右サイドからボールを鋭く運ぶと倒れこみながらゴール前にクロスを送る。ファーポスト際でフリーになっていたグリシャ・プレメルがヘディングシュートで合わせて貴重な先制ゴールをもたらした。ドリブルで持ち込む時のファーストタッチ、相手に体を寄せられながらもブレない強さ、そして高さ、スピード、精度とすべてがパーフェクトだったクロス。そのほかでも攻守にみせる高い質のプレーは本格派だ。
ボーフムの粘りの前に2度のリードを追いつかれたウニオンだったが、後半44分にタイヴォ・アボニが挙げたゴールで逃げ切りに成功。この日、レバークーゼンとの一戦を落としたフライブルクをかわし、5位でフィニッシュすることとなった。
ウニオンの強さの1つにチームとしてのまとまり、チームへのつながりがある。たとえ試合に出られないことがあっても、ともにチームのために戦う同志であり、そのためにできることをそれぞれがしようという空気がそこにはある。原口もそうだ。
そうした点で印象的だったのは第31節ライプツィヒ戦の試合終了シーンだ。この試合、原口は出番がなかった。他の控えメンバーと一緒にゴール横でアップをしながら試合の行方を見守っている様子がカメラに抜かれていたのだが、相手に1点リードを許しながら後半41分、同44分と終盤の連続ゴールで劇的な逆転勝利をあげたチームと一緒に心から喜んでいた。そして試合終了のホイッスルが鳴ると、「ヨッシャ!」と軽くガッツポーズをしてチームのもとへと駆け寄っていく。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。