「だから練習は絶対に休まない」 Jリーグ新記録を打ち立てた42歳鉄人GK南雄太、“ヤンチャ坊主”が“選手の鑑”へ変貌した理由

状況に応じて価値観を変化させてきたGK南雄太は自分と向き合ってプロ25年目を戦う【写真:松澤明美】
状況に応じて価値観を変化させてきたGK南雄太は自分と向き合ってプロ25年目を戦う【写真:松澤明美】

北嶋秀朗ヘッドコーチが南に賛辞「それをやり続けたから今があるんじゃないか」

 北嶋ヘッドコーチは折に触れて南の成長を見てきた。現役時代、お互い柏を離れ、熊本で再びチームメイトになった際の最初の練習で「コーチングが変わった」とビックリ。それまでの印象は「強いコーチングが多かった。味方に対して厳しく言うコーチングがすごく多くて、いい部分でもあるし、締まるは締まるが萎縮もしていたというか」だった。

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 しばらくぶりに再会してすぐ変化を感じ取るほどで、「味方を勇気づけながら上手く自分が守れるように、最後に自分が仕留められるような守備を提示することができるようになっていた」と感嘆。大宮では指導者と選手の立場で再々度ともに戦うこととなり、「もっと変わって、もっとコーチングが上手くなっていた。すごい成長している」と、また驚かされた。

 その熊本時代のあるエピソードを北嶋ヘッドコーチが明かす。

「練習後に俺と(藤本)主税さん(現熊本ヘッドコーチ)と雄太でいつも同じ喫茶店に集まって、いつもサッカーの話をしていた。指導者になっても、選手でも『ずっと学び続けるとか、成長し続けることを止めることは絶対止めようね』って。『ずっと絶対成長できるから選手でも、指導者として70歳ぐらいになっても成長したいよね』といつも会話していた。本当、アイツはそのまんま。40歳になっても吸収して、上手くなれるかもと思って練習している。成長は『これぐらいでいいや』となった瞬間から衰えちゃうし、止まる。本当にすごい」

 3人の会はほぼ毎日行われ、ボードを使うなどしてサッカー談議に花を咲かせた。時には昼食も夕食もその喫茶店で取るくらい熱中。当時、熊本に所属していた橋本拳人(ヴィッセル神戸)、堀米勇輝(サガン鳥栖)らも参加した。「サッカーをみんな好きでサッカーのことを話すのが好きで、ずっとサッカーの話をしていた」(北嶋ヘッドコーチ)。

 南は状況に応じて価値観を変化させてきた。北嶋ヘッドコーチは「成長できると探し続けている人には、どんどん新しい何かが装備され、いろんなアイデアを出せるようになる。実践しているのが雄太」と賛辞を惜しまない。「自分に矢印を向けてと簡単に言うが、その矢印って本当はすごく痛くて、苦しいもの。それをやり続けたから今があるんじゃないか」。

 自分と向き合ってプロ25年目。“ヤンチャ坊主”は“サッカー選手の鏡”へと変貌を遂げた。

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松澤明美

まつざわ・あけみ/埼玉県出身。大学でスポーツ新聞部に所属し、その傍ら女子サッカー部を立ち上げた。卒業後は広告代理店、地元新聞社を経て、フリーランスに。新聞社では2010年途中から16年まで大宮アルディージャを担当した。現在はタグマ!にて『大宮花伝』(大宮応援メディア)を運営し、“旬”の情報を届けている。

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