GK最多出場記録更新の南雄太、転機は“30歳契約満了”「必要とされなければ終わる」 監督や同僚が証言する遠藤保仁との共通点
大記録を支えた努力、チームメイトたちは驚きも本人は「全然、普通」
大記録の裏には“ブレない”努力もある。
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南のクラブハウス入りは早い。練習が朝9時半スタートだとしたら、同6時頃には筋肉トレーニングを開始する。チームメイトらは驚くが、南にとっては「全然、普通」のこと。「朝、筋トレしているのも1人でやりたいからってだけで。みんなと同じ時間だと自分のペースで筋トレできないし、時間も掛かる」と本人の理に適う。
練習後は疲労から気持ちが乗らない可能性もあり、「そういうのが嫌なので」。また、「筋トレしたあとに身体を動かした方が運動生理学的にもサッカーの動きに還元することができる」との分析も。「特別なことではない。怪我をしないためにやっているのが一番」と身体のケアも入念でクラブハウスを後にするのは夕方に近い。こういった姿勢はサッカー選手の鏡だ。
今や“いいお手本”的なイメージがあるが、若かりし頃は「別人だと思う。18歳の時は本当にひどかった」と苦笑い。「練習の30分くらい前にクラブハウスにきて、着替えて、何もしないでグラウンドに行って。終わったらすぐに帰っていたし、アイシングは『めんどくさいな』と本気で嫌いだった。本当にずっとそんな感じですよ」。
南は1998年、高校サッカーの名門・静岡学園高から柏に入団。ルーキーイヤーから出場機会を掴んだ。2009年で柏を退団すると、移籍した熊本や横浜FCでも多くの試合で正GKを務めてきた。大宮には昨夏、期限付き移籍してレギュラーの座につき、J2残留にピッチ内外から貢献。完全移籍となった今季も定位置を確保している。
柏、熊本のチームメイトでもある大宮の北嶋秀朗ヘッドコーチは、南の1学年上で高校は違えど少年時代からよく知る仲。18歳の南を思い起こし、「ヤンチャ坊主」と笑う。「俺が(試合に)出るというのがすごく強かった。出られないと監督に食ってかかるような雰囲気を出すぐらい自信を持っていた」と話しつつ、「でも、あの自信がよかったんじゃないか」とも。
生意気盛りだった南に1度目の転機が訪れる。30歳で柏から契約満了を言い渡され、価値観がガラリと変わった。南は「それまでサッカーを辞める、サッカーができなくなると感じたことはなかった」が「いつ自分がサッカー選手でなくなるか分からないんだな」という青天の霹靂。北嶋ヘッドコーチも「結構、『恐怖を感じた』と言っていた」と証言する。
幸い熊本からオファーがあり、その衝撃は“災い転じて福となす”ことになる。
松澤明美
まつざわ・あけみ/埼玉県出身。大学でスポーツ新聞部に所属し、その傍ら女子サッカー部を立ち上げた。卒業後は広告代理店、地元新聞社を経て、フリーランスに。新聞社では2010年途中から16年まで大宮アルディージャを担当した。現在はタグマ!にて『大宮花伝』(大宮応援メディア)を運営し、“旬”の情報を届けている。