GK最多出場記録更新の南雄太、転機は“30歳契約満了”「必要とされなければ終わる」 監督や同僚が証言する遠藤保仁との共通点
GK楢崎正剛氏が持つ660試合を塗り替え、南雄太が661試合出場で金字塔
プロ25年目の42歳、大宮アルディージャのGK南雄太が金字塔を打ち立てた。J2リーグ第14節、大分トリニータ戦でJリーグ通算661試合出場(J1=266試合、J2=395試合)となり、GK最多出場記録を樹立。名古屋グランパスエイトなどでプレーした元日本代表GK楢崎正剛氏が持つ660試合を塗り替えた。柏レイソル(291試合)、ロアッソ熊本(155試合)、横浜FC(183試合)を渡り歩き、大宮(32試合)で大業を成すまでの足跡を辿っていく。(取材・文=松澤明美/全2回の1回目)
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今年で43歳を迎える大ベテランの成長曲線はいまだ右肩上がりを続ける。「こんなに長くやっているなんて18歳でプロになった時の自分に言ってもたぶん信じないと思う」。自身さえも予想していなかった活躍を見せて大宮の最後尾を守り、憧れの存在で尊敬する楢崎氏の記録を更新。南の下へは祝福の声が次々と届いた。
「本当に1試合1試合を積み重ねてきて数字になっただけであまり実感もない。そんなにたくさん出たのかなって感じもする。ナラさんは日本人のGKの中で一番に目指す選手だなとずっとやってきた。日本代表でポジションを取るなどは叶わなかったがこうして1つ、ナラさんと並べたのは自分を誇っていいのかな」
約四半世紀をサッカーに捧げてきた南のプレーは衰えを知らない。
659試合目に当たる第12節のザスパクサツ群馬戦では絶体絶命のピンチからチームを救った。前半34分、0-2の場面で今試合2度目のペナルティーキック(PK)を与え、これが入ると挽回は相当に難しい窮地に。群馬のキッカーは1度目のPKを決めている岩上祐三で、再度同方向に蹴ったボールを南がビッグセーブして難を逃れた。
守護神の好守がチームを鼓舞し、3-2の逆転劇につながる。群馬戦、第13節のツエーゲン金沢戦(660試合目)で連勝を飾り、大分戦の引き分けで3戦負けなし。チームは20位からの巻き返しへの兆しが見え始め、同僚の矢島慎也は「雄太さんが群馬戦のPKを止めたのが大きかった。プロとして尊敬しています」と羨望の眼差しだ。
その矢島はガンバ大阪時代に遠藤保仁(ジュビロ磐田)がJ1最多出場記録の632試合(当時)を飾った際も、今回の南の更新試合でも同じピッチに立っている。2人の偉大な先輩の節目に居合わせ、「ある意味、数少ない(歴史の)目撃者なんじゃないかな。現役であんなに長く、普通はできない」と敬服した。
2人に共通するのは矢島によると「どんな状況でも自分のやることは変えない」点だという。「もしかしたら2人は違うタイプかもしれないが、それぞれプロ1年目から自分のなかで決めてやっていることは、たぶん今でもずっと変わってないんじゃないか。いろいろ変化は加えているけど自分の軸にあるものはブレずにやっているという感覚はある」。
大宮の霜田正浩監督は「そういう選手たちに共通するのは、身体の丈夫さも、もちろんあるが、メンタルがブレないというか、一喜一憂しないというか。職人ですよね」と言う。「ヤット(遠藤保仁)もそうだが自分の目の前のことにずっとフォーカスし続けられる能力が高い。ブレない強さみたいなのが彼らは共通して持っている」と称えた。
松澤明美
まつざわ・あけみ/埼玉県出身。大学でスポーツ新聞部に所属し、その傍ら女子サッカー部を立ち上げた。卒業後は広告代理店、地元新聞社を経て、フリーランスに。新聞社では2010年途中から16年まで大宮アルディージャを担当した。現在はタグマ!にて『大宮花伝』(大宮応援メディア)を運営し、“旬”の情報を届けている。