鎌田&長谷部のフランクフルト、ドイツ中が心を掴まれた歴史的快挙 指揮官が名指しで感謝する“救世主”「ファンタスティック」
「ヨーロッパリーグで決勝進出を果たせたというのは普通ではないこと」
会長のペーター・フィッシャーがファンの立場からコメントをするのも素敵だ。ウェストハムとのセカンドレグの前には「途絶えることのない情熱の素晴らしさ。ものすごく誇りに思っている。ホームの俺たちを倒したいなら、何かを思いつかないと無理だ」と戦闘モードファンからの喝采を浴びていた。
SD就任1年目のマルクス・クレッシェもいまや完全にフランクフルターだ。
「試合前はとてもドキドキしていた。ヨーロッパリーグで決勝進出を果たせたというのは普通ではないことだ。もう本当に幸せだ。1年前シーズンがスタートし、最初の公式戦となったドイツカップ1回戦でマンハイムに敗退した時、ヨーロッパリーグの決勝に我々が立つだなんて誰も思いもしなかっただろう。試合中、そして試合後の風景を言葉で表現することはできない。クラブへの愛情と情熱があふれていた。この道を最後まで一緒に行きたい」
決勝進出までいろんな苦しい戦いがあった。試合ごとにヒーローがいた。そんな中、どんな試合でもチームを助けてくれたのが、GKケビン・トラップだろう。グラスナー監督も名前を挙げてその貢献に感謝の言葉を残している。
「ウェストハムは手強い相手だった。セカンドボールを狙い、フィジカル的なプレーをしてくることはわかっていた。それにしっかりと対抗することが重要だった。情熱的に守り、そしてそれを最後尾でケビンが支えてくれた。ファンタスティックだった」
ベティス戦でも、バルセロナ戦でも、ファンから悲鳴が上りそうなシーンでチームを救ってくれたのがトラップだった。的確なポジショニングで相手のシュートをブロックし、タイミングよく反応してシュートをかきだす。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。