目指すはバロンドール 新怪物FW中島大嘉、愚直なまでの向上心と素直さが生み出す脅威の“成長力”
3日間の合宿が大きな刺激に
その言葉だけを聞くと誤解を与えるかもしれないが、中島は内向的でもなければ、社交性に欠けるわけでもない。要するに素直なのだ。思ったことは包み隠さず口にするキャラクターであり、いい意味で表裏を感じさせない。
例えば、得意のヘディングについて聞かれると、「身長も高くて身体能力も高くて、上で止まれる。人より高い自信はあった」と自信満々に言ってのけたあとで、ポジショニングや入るタイミングなど、明確な課題に向き合ってきたことを認めつつ、高校時代に朝練からクロスを上げてくれた仲間に感謝を表していた。
そんな中島が今回の合宿でやや苦していたのがオン・ザ・ピッチのコミュニケーションだ。札幌であれば手のジェスチャーやちょっとした動作で味方が気付いて、パスを出してくれる。しかし、勝手がちがう代表チームではそれだけでは味方が気付いてもくれないのだ。
「(札幌では)あんまり呼んで、相手にばれたくないので手でやっています。チームだと分かってるので。だけど、ここでは声を出さないと見てもらわへんなと」
そう意識した中島は練習試合でも積極的に声を出して、ボールを引き出そうとしているように見えた。そしてオフ・ザ・ピッチを含めて「サッカーしてたら仲は良くなっていく」と語る中島にとって、たった3日間の合宿でも大きな刺激を得るものになったはずだ。
もちろん、今回は6月1日からウズベキスタンで行われるU-23アジアカップの選考も兼ねている。この結果でパリ五輪行きが決まるわけではないが、2年後を目指すチームにとって非常に重要な大会であり、選手にとっては格好のアピールの場になることも間違いない。
中島の目標は「バロンドール」(世界最高選手の称号)だ。もちろん筆者も最初にそれを聞いた時は、突拍子も無い夢物語に思いつつも応援したい気持ちでいた。それから札幌での成長ぶりを見て、まったくの絵空事でもないと思えるようにはなってきているが、本人が真っ直ぐな向上心で、日々を取り組んでいる証でもあるだろう。松木は中島に筋トレ指導したことを聞かれると「ちょっとサボっていた(笑)」と語ってはいたが。
今シーズンはルヴァンカップで4得点、リーグ戦で2得点の合計6得点。高卒3年目の若手選手として考えれば上々だが、はるか高みを目指す中島は「6点しか取ってない」と自分の厳しく語る。それでも特長に対する揺るぎない自信はある。それをどう、さらなる結果につなげていくのか。ここからU-23アジアカップに招集される、されないにかかわらず、中島のJリーグでの進撃に注目していきたい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。