J1清水、ホーム未勝利も垣間見えた可能性 上位浮上を目指す“ワクワクするサッカー”への期待感

川崎に0-2で敗戦の清水【写真:Getty Images】
川崎に0-2で敗戦の清水【写真:Getty Images】

【J番記者コラム】王者・川崎との対戦で浮き彫りとなったクオリティーの差

 3年ぶりに規制のないゴールデンウィークの最後の試合となる5月7日のJ1リーグ第12節、清水エスパルス対川崎フロンターレ戦。両クラブのフラッグの横には鯉のぼりが五月晴れの中で気持ち良さげに泳いでいたが、この日の観客数は今季ホーム最多となる1万3888人を記録した。清水は前節の湘南ベルマーレ戦でカウンター、セットプレー、そしてウイングバックの裏からのクロスと狙い通りの4ゴールで快勝した勢いでホーム初勝利と今シーズン初の連勝、そして川崎はAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)日本勢4チーム唯一のグループステージ敗退ショックの払拭とJリーグ優勝に向けての再始動の試合ということで、それぞれのサポーターも熱い戦いを期待していた。

 清水が川崎に勝利したのは2015年まで遡らなければならないが、その間11回の対戦で6試合が完封負け、直近3試合も無得点での敗戦を喫しており、清水が川崎から得点を奪えるのかが1つのポイントだと思っていた。試合は立ち上がりこそ互角の戦いとなったが、徐々に川崎にペースを掴まれ、前半14分、32分と清水の隙を見逃さずに川崎らしいパスワークと決定力を見せつけられて2失点。後半は川崎をシュート1本に抑えチャンスは作ったが決め切ることができず、結果的にはまたも得点を奪えずに0-2の完封負けとなった。

 試合後、平岡宏章監督は「相手のボールの動かしに対してアプローチに行けなかった。相手をリスペクトしすぎたところがあったが、もう少し怖がらずに行けたところもあり、少し消極的だった」と話した。

 奇しくも、試合前日会見では番記者からの「リスペクトしすぎないことも大事ではないか?」という質問に、GK権田修一は「自分は今までどこのチームとやる時もリスペクトしすぎて入ることはなかったし、これからも絶対にないと思う」と現役日本代表正GKらしい頼もしい言葉を聞くことができたが、フィールドプレイヤーは対峙した肌感でチームとして王者川崎に対してもう一歩寄せ切ることができなかった。また、DF山原怜音は試合後に川崎との違いを「ゴール前でのクオリティー」と話し、MF松岡大起は「サポートの位置やそのスピード、パスの質」と悔しそうに話した。

 川崎はここまでの11年間で、監督は代行も含めて4人。鬼木達監督が率いての5年間ではリーグ優勝4回を記録し、リーグ優勝を逃した2019年でもルヴァンカップ初制覇を果たした。

 毎年、主力選手を海外に送り出してはいるが、その強さに変わりはなく今シーズンにリーグ3連覇を目指している。一方の清水は10年間で10人の監督が指揮し、2016年にJ2へ降格して翌年にJ1へ復帰してからは2018年を除いて毎年残留争いをしてきたチームである。しかも2年連続シーズン終盤で監督に就任して指揮はしていたものの、今シーズンに初めて始動からチームを率いている平岡監督は実質Jリーグ1年目の新人監督でもあり、川崎とのチームの成熟度と経験値の差は大きく、その差を埋めるには一長一短にいかないのは当たり前の話である。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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