好調維持の鳥栖、“オシムサッカー”彷彿の躍動スタイル 覚醒した“天才”に響いた監督の言葉「もっと楽しめ」
鳥栖に加入した天才肌の堀米勇輝は特徴を発揮
今年の鳥栖は、それぞれ20人近い選手たちの出入りがあり指揮官も変わった。だが川井監督が追求するサッカーの実現のために必要な人材を見極められたことが、しっかりと伝わって来る。例えば、この日芸術的なFKで勝利に導いた堀米は、10代から嘱望され多彩なキックを持つ天才肌の部分と瞬発、持久両面の走力を備えていた。だが所属チームに恵まれず、その特徴を発揮し切れずに来たが、ようやく鳥栖へ来て水を得た魚のようだ。川井監督からの「もっと楽しめ」は、覚醒のカギになったのかもしれない。
両チームを比較すれば、トータルの走行距離で11キロ以上、スプリント回数では56回の差が生まれた。それだけに酷暑の夏場は鳥栖の大敵になるかもしれないが、川井監督は「前戦のパフォーマンスでメンバーは選ばない。来ていない選手が悪いわけではなく、対戦相手で誰を使うかを決めている」と宣言している。総合力を引き出す采配の妙が、長丁場でどう活かされるのか興味深い。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。