イメージNO1クラブに輝いたドルトムント 倒産寸前だったクラブを救った戦略
黄と黒を貫き、定着させたアイデンティティー
同10月24日、出版社『Econ』が主催するマーケティング賞において、ドルトムントに”年間最優秀個人賞“が贈られた。この賞が個人ではなく、企業に与えられるのは初めてだ。受賞の理由には、やはりあのキャッチコピーが含まれていた。
「『Echte Libe』という明確な戦略を打ち出し、サポーターに再び歓喜をもたらした。株式会社としてステークホルダーに対してもマニフェストの実行責任を果たしている」
ドルトムントはアウェーでも、CLでも、カップ戦でも、「黄と黒」を基調にしたユニフォームしか着ないことを哲学にしている。売り上げだけを考えたら、他のクラブのように”CL限定のオレンジ“といった他色のユニフォームを着た方が利口かもしれない。しかし、それではドルトムントのアイデンティティーが失われてしまう。
ゴール裏の席も同じだ。2万5000人というヨーロッパ最大の立ち見席ブロックを座席に変え、席料を上げれば年間で3~4億円の増収が見込める。だが、ヴァツケは絶対にそれをしないと断言する。
「ブランドイメージのために、時には短期的な経済的収入を諦めなければならない」
ドルトムントはピッチだけでなく、ブランド戦略の世界においても、新たなスタイルを確立しようとしている。
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木崎伸也●文 text by Shinya Kizaki