名古屋はなぜ勝てない? 「去年なら勝てた」の声も…フィッカ前体制との比較は“無意味”、惜しまれるシーズン前の誤算
結果が伴わない現状打破へ、MF仙頭が挙げたものとは?
とはいえ、悠長に構えていられる順位ではなく、かと言って何かのテコ入れができる時期でもない。チームの攻撃の構築としてはフィニッシュまでのお膳立てはできている。指揮官のFW頼みは神頼みではなく信頼感の表れであり、あるいはチームが積み重ねてきたものへの自信だ。それでも勝てない時期がこれ以上続けば、その自信も再び揺らぐことになる。現状はそれほど楽観視できない。
京都戦の前日に現状を問われた長谷川監督はガンバ大阪監督時代に3冠を達成した2014年シーズンを引き合いに「前半戦は15位くらいのところで後半戦からだった。当然夏のウインドーというところも必要になってくる」と反転攻勢も視野に入れている様子だったが、それをあてにするためにも「現状としてやるべきことはしっかり闘える土俵を作ること」を宣言している。
それはつまり、攻撃のさらなる構築と、現有戦力による試合のクオリティー向上を指す。だからこそ「FWをやっているうえで、みんながつないできてくれたボールを最後にゴールに流し込むのは自分たちの責任」というFW酒井宣福の意気込みは力強くもあり、チームの必死さが伝わるようでもあった。
勝利に特化してきたここ2年間の名古屋からイメージすれば、現在の姿は情けなく映るのかもしれない。去年のチームならば勝っていた、という声はそこかしこで聞くし、実際にそう思う試合もある。
しかし、その勝ち方は今の名古屋が求めていないのだから、ここは正念場である。苦労しながらも築けてきた土台の上に、かなりの割合で建屋ができてきた。あとは仕上げにどのような装飾を施すかという時点で、文字通りの適材適所を探しているのが今の名古屋だ。
それは手持ちの在庫から見つかるかもしれないし、どこかから仕入れてくるのかもしれないが、受け入れる側は日に日に強固なものになってきている。MF仙頭啓矢はこの煮え切らない状況を打破するものとして「連勝」を挙げた。まずは勝ち、そして勝ち続ける。その一歩が踏み出せた時、グランパスは大きく変貌を遂げる可能性を、今はまだ秘めていると思う。
(今井雄一朗 / Yuichiro Imai)
今井雄一朗
いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。