名古屋はなぜ勝てない? 「去年なら勝てた」の声も…フィッカ前体制との比較は“無意味”、惜しまれるシーズン前の誤算
システム変更によってチームの動きは改善された印象も
クラブの30周年イヤーで13年ぶりの優勝を目指すと宣言したシーズンにおいて、これはなかなかに厳しい状況だと言わざるを得ない。
なぜ勝てないのかと問えば、それは現在においては得点力不足の一言に尽きる。シーズン開幕当初は戦術浸透や個々の連係構築に未熟さが残り、180度とも言えるスタイルの変更を試みたチームにとって、それは致命的に試合のクオリティーを左右していた。
45分が良くても残りの45分は良くない、45分は圧されたが45分で持ち直した……。序盤の名古屋にはそうした不安定さが散見され、勝ち点3を手放すことも多かった。今はその段階は乗り越え、システム変更によってチームの動きはかなり改善された感がある。
積極的にボールとゴールを奪いに行きたいスタイルや志向があるなかで、どうしてもコンパクトな布陣を形成できなかった部分に対して3バックのシステムは効果てきめん。アンカーを置く3センター、2トップの攻撃ユニットも選手の特徴に合致し、とりわけウイングバックのポジションでDF森下龍矢とFW相馬勇紀が躍動感を出せるようになったことがチームを前に押し出した。
ここまで来て、ようやくチームは勝つためのベースを整えた感がある。3バック変更後のチームは守備面で落ち着きを取り戻し、チャンスクリエイトという面でも試合ごとにその質を高めている。
一方で、得点数が上がっていかないのはひとえに“決定力不足”という側面に尽きるところがあり、長谷川監督もことあるごとにFW陣の奮起を口にする。決定機は作れている、押し込む時間帯も多い、ただ決める選手がなかなか出てこない。悪夢のような逆転負けを喫した磐田戦(J1リーグ第10節/1-2)も試合自体は支配する部分が多く、一方的な試合にできる要素も多く存在した。
この試合ではリードを奪った後のマネジメントに迷いがあったような部分も見られたが、そこは翌節の京都サンガF.C.戦(1-1)でしっかり申し送りがなされ、「1点目を奪ったら追加点、そしてダメ押しを狙う」というチームの意思統一もしっかりと戦えてはいた。
それでも京都に勝ち切れなかったのは、得点の奪い方における不足感があったからにほかならない。そこは一番に目につく部分で、FWの選手たちの価値を改めて思い知らされる。
今井雄一朗
いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。