名古屋はなぜ勝てない? 「去年なら勝てた」の声も…フィッカ前体制との比較は“無意味”、惜しまれるシーズン前の誤算
【J番記者コラム】現在リーグ14位の名古屋、低迷する要因を紐解く
昨季リーグ5位からさらなる躍進を期したなかで、長谷川健太監督を迎えた今シーズン序盤はここまでわずか2勝止まり。名古屋グランパスはなぜ勝てないのか?ここまでの戦いぶりを踏まえ、マッシモ・フィッカデンティ前体制時と比べながら、その要因を改めて精査する。
最初に打ち明けてしまえば、前体制との比較はあまり意味がない気はしている。徹底的な戦術・管理体制の下で何が何でも勝つ集団になっていったフィッカデンティ監督時代の名古屋と、そのエッセンスは引き継ぎつつも方針転換を図った長谷川現体制とでは、勝利に対するアプローチの仕方がまるで違うからだ。
前体制でできたことはもちろん今もできていてほしい一方で、その感覚が今のスタイルを阻害する嫌いは、やはりある。前体制がネガティブだったわけではないが、“アグレッシブに闘う”という大前提を置く今季の名古屋にとっては、やはり一からのスタートを意識するほうが正しいと思う。
それだけに、1月から2月にかけて行われた沖縄でのプレシーズンキャンプが惜しかった。ただでさえ例年よりも開幕が早く、チーム始動もキャンプインも1週間近く早いなかで、この合宿期間はコンディション面以上にチームスタイルの習熟という点で大きな意味を持っていた。
しかし、日程は5日目の練習試合を消化した時点でチームに新型コロナウイルス陽性が多数出たことで中断し、少人数でのグループ練習を再開できたのが2月4日。プレシーズンの6日間を沖縄のホテルの自室で“缶詰め”になったことで、選手たちはフィジカルコンディションにおいてもかなりの遅れをとることになり、予定されていた残る3つの練習試合で試合勘を養うこともできなかった。
開幕の前週にようやくジュビロ磐田との練習試合を行なうことができたチームは突貫工事で仕上げの作業にかかり、開幕戦のメンバーは実はぶっつけ本番の組み合わせもあったというからドタバタのシーズン開幕だった。
そこからしばらくは“出遅れた”という部分を考慮しながらの戦いが続いた。ヴィッセル神戸戦とのリーグ開幕戦こそ2-0で勝利したが、相手の不調もあっての勝利に手応え自体は少なく、次の勝利は1か月半後を待たねばならなかった。
王者として挑むルヴァンカップも苦戦は続き、公式戦全体での勝利はいまだ4勝とふるわない。状況を打破すべく4月13日のルヴァンカップ・サンフレッチェ広島戦からは布陣を3-5-2に改め、チームはやや好転の兆しを見せたが、飛躍的な結果をそこに伴わせられず、リーグ11戦終了時点で勝ち点11の14位と降格圏内も見えてきた。
今井雄一朗
いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。