“盟主”遠藤航に託されたシュツットガルトの未来 残留に向けて課せられたタスクとは?
ヘルタ・ベルリンに敗れて降格圏に接近
1点ビハインドで推移したヘルタ戦、焦れるシュツットガルトは気を急いてチームバランスを崩してしまう。時計の針はすでに90分を過ぎ、アディショナルタイムに突入した刹那、急遽のカウンターを受けたシュツットガルトは帰陣を余儀なくされ、左ストッパーの伊藤が必死に防御態勢を取る。しかし、なかなか仲間のサポートが得られない。ゴール前で踏ん張り、相手FWイシャク・ベルフォディルのフェイントに対応した伊藤だが、最後は尻もちを付かされて身体の横にシュートを通された。
絶望的な失点直後に試合が終了した瞬間、伊藤が崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。チームメイトが手を伸ばして彼を引き起こそうとしている。キャプテンの遠藤が仲間を促し、アウェースタンドに陣取るサポーターたちの下へ挨拶に赴く。激しい罵声とブーイングが浴びせられる中、周囲ではヘルタサポーターたちが奏でる凱歌が響き渡っている。これで16位・シュツットガルトと15位・ヘルタとは勝ち点4差へと広がり、自動降格圏の17位・アルミニア・ビーレフェルトとは勝ち点2差に肉薄した。
翌32節、シュツットガルトのホーム、メルセデス・ベンツ・アリーナに向かう地下鉄車内には多くのシュツットガルト・サポーターがひしめき合っていた。スタジアムまでの道中に設営された屋台ではビールをあおる一団が大挙し、この後のゲームの行方に思いを馳せている。チームの危機にサポーターが立ち上がろうとしている。
今節の対戦相手は12位のヴォルフスブルクで、この試合を落とせば自動降格圏転落の可能性もある。苦しい時こそポジティブなサポートが必要だ。ドイツのサッカーファン、サポーターは熱狂的で勝敗に激しくこだわるが、少なくとも試合が終了するまでは献身的にチームを支える。シュツットガルトの選手たちはウォーミングアップのためにロッカールームからピッチへ降り立った瞬間にその熱意を感じ取っただろうし、だからこそ奮起して試合開始から前傾姿勢を取ったはずだった。
前半13分にコーナーキックからヴォルフスブルクのDFジョン・アンソニー・ブルックスにヘディングシュートを浴びせられて失点を喫しても、この日のシュツットガルトは闘志が萎えなかった。遠藤は相変わらず前目のポジションでファーストディフェンスと攻撃起点の両輪を担い、前節の反省を踏まえた伊藤は鼻骨骨折の影響でフェイスガードを装着しながら強靭なチャージと卓越した左足を駆使したフィードでチームに貢献した。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。