良きジャッジを生む「選手×審判」の関係性 八木あかね副審がベテラン選手の変化に覚えた“一体感”
「人間対人間」のやり取りで築き上げてきた選手との関係性についても言及
さらに、選手との関係性について尋ねると、「どんどん関係が良くなっている」と年月を重ねるなかで、審判と選手とが良い方向へ向かっているのを実感しているという。ここまでたどり着くには、“ベテラン選手”の存在が大きいと八木氏は話す。
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「僕と一緒に若い頃からやっている選手たちが、30代後半、40歳になったりして仲間になっていると思います。例えば、中澤(佑二)さんが、(東京)ヴェルディいた頃なんかはとにかくイケイケで、反則も多かった印象です。(田中マルクス)闘莉王さんもでしたけど、そういう選手たちがベテランになるに従ってファウルが減ってくるし、お互いが理解し合うというか。個々のケースと同じように、サッカーに対する審判のアプローチ自体というのが理解され始めているんじゃないのかな」
八木氏は、かつて日本代表を支えた2人のセンターバックのプレーの変化に言及。次第に“ファウルしなくなる”姿を見て、審判と選手、お互いが時間をかけて理解し合うことで「審判と選手が一緒にゲームを作っていくというのができつつあるのかな」と感じているという。
一方で八木氏は、選手との関係を語るなかでビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)についても言及。「運用に対してすごく慎重になるし、選手側は期待する部分があるから。そこがまたズレ始めると難しいですよね」と今まで築いてきた“良い関係性”にヒビが入る可能性もあると、テクノロジー導入の難しさも語った。
審判と選手。長い歴史のなかで築いてきた良好な関係値は、「人間対人間」でのやり取りだったからこそ、コミュニケーションを取り、大事に育て上げてきたものだ。
J1がVARを導入して早くも2年目を迎える。“審判×選手×テクノロジー”という新しい時代に突入した日本のJリーグは、八木氏を含め審判団、選手、そして観客が今も手探りな状態だ。道のりは険しい。それでも、「走れる限り、技術が錆びない限り、続けていきたい」と意気込みを新たに、八木氏の審判人生は続く。
[プロフィール]
八木あかね(やぎ・あかね)/1974年1月14日生まれ、大阪府出身。高校卒業後、「Jリーグ審判養成コース」合格を経て、2000年にサッカー1級審判員へ。09~19年は国際副審、14~19年はプロフェッショナルレフェリー(PAR)としても活躍した。これまでJ1通算277試合、J2通算179試合、J3通算4試合、リーグカップ通算61試合を副審として担当。2002年からはフットサル審判員との“二刀流”でピッチを所狭と駆け回る。
(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)