秀岳館高サッカー部の暴力騒動から考察、部活のあり方とは? “旧態依然”の育成は危険…生徒のSOSに気付ける環境作りが今後の鍵

生徒がスポーツを楽しみ、その成長のために指導者が存在するのが理想

 スポーツというのは本来、運動や競技を通したエンジョイがベースにあり、より良い結果を求めて個人や選手が努力して行くことはその延長線上にあるべきものだ。広い意味での育成はもちろん、学校体育の要素が強い部活においても、結局は生徒がその活動を通じて得られる充実や成長のために指導者が存在するのが理想だろう。

 しかし、そうはなりにくいのが実情だ。日本サッカーの育成レベルに限って考えても、圧倒的な分母を形成しているのは高校のサッカー部であり、そうした仕組みを撤廃して行くことは日本ではなかなか実現し得ない。

 そうしたなかで、根本的な解決方法を見出すのは難しいが、大事なのはクローズな空間に留めず、外部との風通しや透明性を出して行くことが1つの道ではないかと考えている。例えば複数の学校を巡回する外部指導員の制度をJFA主導で設置するとか、合同研修を定期的に設けるなどだ。

 その一方で、今回の秀岳館高のようにSNS投稿をしなくても、生徒のSOSに気付ける環境を作って行くこと。例えば高校に外部カウンセラーを義務付けるというのは有効だが、そうした仕組みはサッカー界だけで変えられるものではない。

 SOSの窓口を外部に用意してあげることは選手を助けるだけでなく、指導者側に対しても1つ抑止力になるかもしれない。学校という組織が存在する以上、JFAや各県のサッカー協会が部活に関与できる部分は限られるが、大会と指導者をJFAが管轄していることは1つサッカー界の強みではある。

 最終的にはサッカー界に止まらず、日本がスポーツを通して健全に選手の心身を育める社会になって行くことが理想的だが、サッカー界がそうした改善を示すことは有意義なことであると考える。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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