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秀岳館高サッカー部の暴行疑惑に見る“現場”の改善点 元日本代表DFが考える“指導する側”と“される側”に必要な姿勢とは?
【栗原勇蔵の目】指導者に暴力は許されないし、指導を受ける側もそれ相応の態度が必要
熊本県の秀岳館高校サッカー部で、男性コーチが部員に暴力を加える映像が拡散したことを発端に、部員が謝罪動画をSNSへアップする事態に発展した一連の騒動が物議を醸した。スポーツ指導の現場でたびたび報じられる暴力・暴言、ハラスメントに関して、元日本代表DF栗原勇蔵氏に見解を聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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問題となったのは、秀岳館高校サッカー部男性コーチの暴行疑惑。部員に対して殴る、蹴るの乱暴な行為をはたらく様子がSNSで拡散し波紋が広がると、サッカー部の公式ツイッター上で4月22日、部員が複数並んで謝罪する動画をアップし、「学校から帰り、寮の鍵がなかなか開かず、感情的になりコーチを馬鹿にするような発言をしたのが今回の原因です。暴力が日常茶飯事と書いてありましたが、それは違います」などと説明した。
スポーツ指導の現場でたびたび報じられる暴力・暴言、ハラスメント。中学時代から横浜F・マリノスの下部組織で育ち、トップチーム昇格後も横浜FM一筋18年間、活躍し続けた栗原氏は「どういう背景があったか真相は分からないので」と前置きしたうえで、「何があっても肯定してはいけない」と自身の考えを述べる。
「ユースと高体連のスポ根(スポーツ根性)の差があると昔はよく言われていましたが、僕の時代も厳しい指導を受けていました。時代を言い訳にしてはいけないとはいえ、当時はそれが当たり前。上の世代ではもっと激しかったという話も聞いたことがありますし、体罰があっても『愛がある』と言われてお咎めなしでした。ただ、暴力を振るわれたことで外傷だけでなく心の傷を負うわけで、歴史を重ねて今は許されない時代になりました」
栗原氏は「お互いに本気でやっているからこそのこと」と切り出しつつ、指導者、生徒・選手の両方の立場から意識が必要だと語る。
「指導者の人は立場が弱くなっていて、暴力、言葉の暴力まで言われる時代。本当に優秀な人しか生き残っていけないような状況です。一方で、1人の大人であるプロの世界でも起こりうることで、子供がやられたら何もできない。恐怖心は一生覚えていると思うし、そこは考えないといけません。今は撲滅を徹底する“転換期”にあるのかなと。指導者はそういうことをしてはいけないし、指導を受ける側もそれ相応の態度・姿勢で臨まないといけない。お互いの立場のために、いい環境にもっていかないといけないと思います」
サッカー界の発展を促す環境作りの観点からも、今後も重要なテーマとなりそうだ。
(栗原勇蔵 / Yuzo Kurihara)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。