名門バルセロナ撃破のフランクフルト、“揺るぎない団結力”がもたらす栄光への可能性

フランクフルトサポーターの応援【写真:ロイター】
フランクフルトサポーターの応援【写真:ロイター】

1979-80シーズン以来となるヨーロッパカップ戦の決勝進出を目指す

 バルセロナでは、シーズンチケットをフランクフルトファンに売るバルセロナファンもかなりいたとドイツメディアは報じている。懸けているものが違う。国際舞台を勝ち進むチームを支えたいという彼らの思いが、スタジアムに未曾有の現象を現実のものとしたのだ。

 フランクフルト代表取締役のアクセル・ヘルマンは、「我々のファンの団結力がもたらしてくれるエネルギーに代用品などありはしない。このファンのサポートこそがアイントラハト・フランクフルトが持つ最大の力なのだ」というコメントは大げさでもなんでもない。会長のペーター・フィッシャーはファンとともにビールを飲みながらバルセロナ市内を闊歩した。みんな同志なのだ。

 一方でバルセロナファンのうちどのくらいの人がこの対戦に「本気に」なっていただろうか。どのくらいの人が全力でサポートしようと思っていたのだろうか。何人フランクフルトまで飛ぼうとしただろうか。フランクフルトで行われた第1戦でアウェー席は満員にもなっていなかった。やはりクラブとしてこの対戦にかける思いには少なからずの差があったのではないだろうか。

 凄腕スカウトで、現在はトップチームのダイレクターを務めるベン・マンガが第1戦前のインタビューにこう答えていた。

「誰にとってもこの対戦はハイライト。バルセロナとヨーロッパの国際舞台で対戦する機会はそうあるわけではない。彼らはCLの常連だし、僕らはそうではない。今日スタジアムはファンの思いで燃え上がるだろう。最初から最後まで全力で戦おう。ファンも、チームも、みんなが。そしてみんなの力を合わせて、バルセロナを倒そうじゃないか」

 フランクフルトでの1戦目も、バルセロナでの2戦目も、フランクフルトはまさに総力戦で自分たちの力を見事に引き出して、準決勝への舞台へと駒を進めたのだ。

 査問会長フィリップ・ホルツァーは「歴史に名を刻んだ試合となった。この旅がさらに続いていくことを誇りに思うし、嬉しい! 願わくばセビリアまで」と喜びを爆発させていた。ファン、選手、スタッフ、クラブ。すべてが一致団結して戦い続ける。

 2018-19シーズンではチェルシーとのEL準決勝が終着点となった。狙うは1979-80シーズン以来となるヨーロッパカップ戦の決勝進出。そう、フランクフルトの夢は、旅はこれからだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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