なぜリーグ優勝のPSGにファンはブーイングしたのか お金で強いチームは買えてもファンの心までは救えない

ブーイングは、自分たちの愛情を裏切った億万長者たちへの怨嗟の声!?

 ロンドンと並ぶ欧州の大都市パリは、ようやく街に相応しいクラブを持った。豪華絢爛、セレブたちが鑑賞するに値するチームだ。同時にどこまでもプラスティック。

 大都市ほど格差は大きく冷酷である。カタールのクラブになる以前、パルク・デ・プランスは格差の低い方の人々の吹き溜まりという様相を呈していた。それなりにスター軍団だったが強くもなく、娯楽にあふれたパリでは一部の物好きが関心を示す程度。人口が多いので人気クラブではあったけれども、コアなファンほど阻害された、やさぐれた感じが濃厚だった。スタジアム内外での暴行事件、器物破損などは日常茶飯事。愛情が完全にねじくれていた。

 今回、メッシやネイマール、優勝チームにブーイングを浴びせたファンは、クラブの変貌に置いて行かれた人々だったのかもしれない。自分たちの愛情を裏切った億万長者たちへの怨嗟の声だとしたら、確かに異様ではあるけれどもPSGファンらしい反応だと思う。

 金があれば強いチームも買えるけれども、ファンの心までは救えない。ブーイングの対象になったネイマールは「そのうち飽きるさ」と言い、ムバッペは「一部の反応」と切り捨てている。

 実験的とも言えるPSGの、オーナーと選手とファンがバラバラという現状は、どう考えても何かがおかしい。栄光と華やかさの陰で何かが失われている光景には、何だかうすら寒いものすら感じてしまう。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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