12年ぶりのJ1でなぜ猛威? 京都サンガ“躍進”の「カラクリ」、限られた予算でも新戦力が活きる…低迷脱却への緻密な狙い
【J番記者コラム】好調・京都の裏側、曺貴裁監督の招聘で迎えた大きな転機
12年ぶりのJ1リーグに挑んでいる京都サンガF.C.が好調だ。ここまで9試合を戦い4勝3分2敗の勝点15で5位につけている。かつては昇格と降格を繰り返すエレベータークラブと揶揄され2010年のJ2降格以降、“上昇ボタン”を押せず、逆にJ3降格への危機に瀕したこともあった。そんな状況から、どのようにして躍進を遂げたのか。
大きな転機となったのは曺貴裁監督の招聘だ。パワハラ行為による処分が解け、2021年に約2年ぶりのJリーグ復帰を果たした指揮官は瞬く間にチームを掌握すると、個人と組織を成長させていく。
前年度までのスタイルから180度転換することもあり、「チーム作りに時間がかかるのではないか」という不安もあったが、ふたを開けてみればシーズン序盤から上位に食い込み、見事に2位でフィニッシュしている。
注目すべきはJ2で結果を出しながら、J1で戦うためのチーム作りも進めていたことだ。運動量や攻守の切り替え、球際への強さなどサッカーの本質となる部分を選手に徹底させ、前線からのプレッシングやボールを奪ってからの素早い攻撃など、攻守にアグレッシブなスタイルを落とし込んでいった。1年かけて築き上げたサッカーは、J1でも猛威を振るっている。
さらに、それに応える選手たちが揃っていたことも見逃せない。京都にはFW久保裕也(FCシンシナティ)やMF奥川雅也(ビーレフェルト)らを輩出したアカデミー組織があり、現トップチームにもU-18から昇格してきた選手が7名在籍している。
昨季はスタメンの半数を彼らが占めており、今季も左利きの大型CB麻田将吾や、年代別日本代表でキャプテンを務めていた中盤のMF福岡慎平、ボール奪取に優れるパリ五輪世代のボランチMF川﨑颯太ら若手選手がセンターラインを支えている。彼らが今季の新戦力と上手く融合しているのが、現在のチームだ。
また、獲得した選手からはある共通項が浮かんでくる。昨季に加わったMF松田天馬やDF白井康介、MF武富孝介、今季から加わったMF金子大毅やFW山﨑凌吾、DFアピアタウィア久は、過去に曺監督の指導を受けたことがある選手たちだ。
MF武田将平やFW豊川雄太は、ファジアーノ岡山時代に長澤徹ヘッドコーチの下でプレーしており、J3からJ2、そしてJ1へ個人昇格を果たしたDF井上黎生人やMF三沢直人は曹監督が湘南ベルマーレ時代にコーチとしてともに戦った高木理己氏(FC今治コーチ)がガイナーレ鳥取を指揮していた時に在籍していた選手だ。
指導陣のネットワークを駆使することで、限られた予算からスタイルに合致する選手の獲得に成功している。開幕前は主力選手にJ1初挑戦となる選手が多いことが心配されたが、これも現在のところ杞憂に終わっている。特に中盤は武田、福岡、川﨑の3人全員がJ1初挑戦だったが、好調の原動力の1つと言える程のパフォーマンスを披露している。