ACL参戦のJリーグ勢「キーマン&ブレイク候補」 神戸ロティーナの“秘蔵っ子”に期待、川崎20歳FWが“決め手”へ名乗り上げるか
エースFWとして奮起が期待の浦和ユンカー、神戸はFW大迫の本領発揮が待たれる
■浦和レッズ(グループF)
リカルド・ロドリゲス監督が率いて、5年ぶり3度目のアジアを獲りに行く。シンガポールのライオン・シティ・セーラーズ、中国の山東泰山に連勝したことで、浦和のグループリーグ突破はかなり見通しが明るくなったが、決勝ラウンドが一発勝負になるので、組分けを有利にするためにも首位突破はノルマに近い。
【キーマン】キャスパー・ユンカー(FW)
昨年は鳴り物入りで加入して、いきなりJリーグでゴールを量産したが、度重なるコンディション不良や怪我などに悩まされて、今年もここまで期待通りの結果は出せていない。新加入のFWアレックス・シャルクが山東泰山戦で見事な2ゴールを決めており、本来のエースストライカーとしても奮起しないわけにはいかないだろう。動きのキレは良くなっているので、あとは周りとの呼吸も含めて合わせることができるか。
【ブレイク候補】鈴木彩艶(GK)
「誰よりも身体が伸びる」と身体能力と前向きなキャラクターが強みの新鋭GK。GK西川周作という分厚い壁に挑んでいるが、ライオン・シティ・セーラーズ戦、山東泰山戦、大邱戦と3試合に続けて先発して、守備機会がそれほど多くないなかでも、ハイラインの背後をしっかりと守りながら、ビルドアップでも貢献している。パリ五輪世代の若手GKは所属クラブでなかなかポジションを掴めていないが、タイトルも期待される浦和でそれを果たせば、五輪代表はもちろんA代表に近づくはずだ。
■ヴィッセル神戸(グループJ)
Jリーグでは未勝利のまま三浦淳寛前監督からミゲル・アンヘル・ロティーナ監督に交代。ACLでは中国の上海海港が辞退したことで、タイに移動してから指揮官も「キャンプのよう」と語る落とし込みの時間が与えられた。最初の試合となった香港の傑志との試合は苦しみながら2-1で勝利。残り3試合で首位突破を勝ち取れるか。
■大迫勇也(FW)
FW武藤嘉紀、MFアンドレス・イニエスタを欠く状況で、やはりこの日本代表FWに懸かる期待は大きい。Jリーグでは8試合で23本のシュートを打ちながら1点も取れておらず、このままではカタール・ワールドカップの出場も危ういことは本人がよく理解しているだろう。代表より前に、ACLで神戸を勝たせる決定的な仕事が求められるなかで、傑志戦ではFWボージャン・クルキッチのクロスにニアで潰れて、MF郷家友太のゴールに導いた。当然、次の試合で求められるのは自らの「半端ない」ゴールだ。
■井上潮音(MF)
ロティーナ監督は東京ヴェルディ時代の恩師であり、戦術理解の部分で大きなアドバンテージがある。傑志戦は途中出場ながら、MF汰木康也のクロスからタイミングよく飛び込み、チームに勝利をもたらすゴールを決めた。個人ですべてを決めてしまうタイプではないが、攻撃のテンポを作りながら、危険なエリアに顔を出してアクセントになる。ロティーナ監督の戦術を深く落とし込む時間はないなかで、指揮官の“秘蔵っ子”としてさらに大きな仕事をやってのける期待が高まる。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。