ACL参戦のJリーグ勢「キーマン&ブレイク候補」 神戸ロティーナの“秘蔵っ子”に期待、川崎20歳FWが“決め手”へ名乗り上げるか
【識者コラム】川崎、横浜FM、浦和、神戸のグループ突破へ鍵を握るのは?
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の東地区はセントラル開催でグループリーグが行われ、J1王者の川崎フロンターレがマレーシア、横浜F・マリノスがベトナム、浦和レッズとヴィッセル神戸はタイで奮戦している。今回はそれぞれのクラブからキーマンとブレイク候補をピックアップ。後者に関しては、ACLだけでなく、帰国後のリーグ戦にもつながる活躍が期待される選手を選んだ。
■川崎フロンターレ(グループI)
前回大会はラウンド16で蔚山現代(韓国)とのアウェー戦に臨み、惜しくもPK戦に散った。今回はその蔚山も同組。グループ初戦で激突し、土壇場で追い付き1-1で引き分けた。地元マレーシアのジョホール・ダルル・タクジムとの“三つ巴”の組で、首位突破に期待が懸かる。その中で若手が大きく成長すれば、ACLはもちろん、3連覇が期待されるJリーグにもつながるはずだ。
【キーマン】車屋紳太郎(DF)
J1の開幕戦で溌剌としたパフォーマンスを見せながら、右肩の負傷で離脱していた。ACLが復帰戦となったが、蔚山戦で最後の最後に相手GKのミスを逃さず、劇的な同点ゴールを決めた。続く広州FC(中国)戦でも2得点を記録して8-0の勝利に貢献。もちろん、第一の仕事はCBとして相手FWを封じることだが、本職が左サイドバックということもあり、機転の利いた攻撃参加やセットプレーの勝負強さなど、攻撃面でも大きな働きが期待される。
【ブレイク候補】宮城 天(FW)
アカデミーからの昇格3年目となる20歳アタッカー。昨年のACLデビュー戦で得点を決め、その後のリーグ戦につなげていたが、本格ブレイクにはあとひと息、ふた息というところだ。自在性の高いドリブルや左外から切れ込んでのミドルシュートはすでにJトップレベル。さらにコンビネーションの崩しや守備での貢献など、徐々に成長しているが、このACLでもうひと皮剥ければMF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)やMF旗手怜央(セルティック)が欧州へと旅立ち、現在チームにやや不足している“決め手”をもたらせるはず。大岩剛監督が率いるパリ五輪世代の代表でも、主力定着に期待が懸かる。
■横浜F・マリノス(グループH)
他の組で中国勢がコロナ禍で出場辞退したり、リザーブチームを派遣したことで、H組は最も厳しい組と見られている。“完全アウェー”のホアンアイン・ザライ(ベトナム)戦に何とか勝利したものの、アジア制覇の試金石とも言えた全北現代モータース(韓国)との2戦目に敗れてしまったが、“自分たちのサッカー”を貫いてこの難局を乗り越えたら、ケヴィン・マスカット監督の率いるチームは一段と成長を遂げそうだ。
【キーマン】永戸勝也(DF)
ホアンアイン・ザライ戦でセットプレーからFWレオ・セアラの2得点をアシストした。「だいぶ中との意思が合ってきている感覚はある」と本人が語る通り、CKやFKのキッカーとして頼りになるだけでなく、流れから良質なクロスを送り込んでゴールをこじ開ける鍵となる。ベガルタ仙台、鹿島アントラーズ時代から見せてきた正確なクロスはインナーラップを増やすことで、バリエーションが増えている。高さで勝る相手に対してもGKとディフェンスの間に入れるボールや抉(えぐ)ってからのマイナスクロスなど、豊富なアイデアで貴重なゴールを演出しそうだ。
【ブレイク候補】藤田譲瑠チマ(MF)
パリ五輪世代の注目選手の1人であり、東京ヴェルディ、徳島ヴォルティス、そしてマリノスと異なるスタイルのアタッキングフットボールを経験しながら、成長の足掛かりにしている。いわゆる“ボックス・トゥ・ボックス”と巧妙な立ち位置で相手のディフェンスをいなしながらのパスワーク、両方で存在感を出せる選手で、ボールを奪う能力も高い。そして20歳ながら高いリーダーシップを備えていることもアジアの舞台で大きなプラスだ。さらにプレーのアベレージを上げながら、決定的なシーンに顔を出していけるかどうか。まさにブレイク前夜の選手だ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。