26歳で二度“引退した”元浦和Lの万能MF 単身海を渡りスペインリーグに挑戦する理由とは
ピッチを離れて変化したサッカーへの思い
「研修では、もちろんストレッチの仕方や筋肉の名前も勉強するんですけど、接客でもあるのでコミュニケーション能力を鍛えるものが多かったんです。最高のメンバーと一緒に過ごしているなかでいろいろな価値観が広がって、これからのことも考えるようになっていたんです。その間にも望愛からタイムリーに情報が入ってきていて。サッカー以外にもやってみたいことは色々とあったんですけど、それは結構できたかなと思ったら、最後はなんとなく心にあった『海外で暮らしてみたい』というのが残っているのかなと。それなら、若い頃に海外でサッカーをしてみたいと思っていた自分もいるし、サッカーを手段にしようかなと思ったんです。今チャレンジしないと、後で後悔するんじゃないかなと。Dr.ストレッチの仲間に背中を押されるような気持ちもありましたしね」
そこからは、トントン拍子に話が進んだ。千葉に現地のコーディネーターを紹介してもらい、5月から6月にかけて3チームを回った。そのうち、グラナディーラへの加入が決まった。テネリフェ島にあるチームだけに、外国人がプレーすることによるスペイン本土への航空券代などいくつかの障害はあったが、クリアになり新シーズンからのプレーが正式に決まった。
「チームにはボランチかトップ下でと言っていますし、楽しみです。サッカーがうまくなりたいだけの気持ちなら、ドイツとかフランスに行くのかなと思いますけど、純粋にサッカーを楽しみたいと思っているんです」
堂園は高校卒業後、3度目の“加入”にして初めて自らの心のおもむくままに、楽しむためにサッカー選手になる。それも海外であり、スペインリーグと言いながらも本土からは離れた大西洋上の島だ。それでも「島全体が家族みたいな感じで、都会に行くよりもいいのかな」とほほ笑んだ。
新しい言葉を覚えなければならず、すべてが変わる海外での生活がスタートする。それでも、純粋にサッカーを楽しむ日々が始まるはずだ。その時、本当の意味でサッカー選手としての喜びを味わうのかもしれない。
【了】
轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada
写真:本人提供