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唯一無二の熱き男 ウニオン・ベルリン原口元気が白熱の“ダービーマッチ”で輝ける訳
闘う姿勢でサポーターの心を掴む
そして今季、原口はドイツの首都ベルリン、旧東ドイツのケーペニック地区を本拠地とするウニオンへの移籍を果たす。2部のハノーファーから1部のウニオンへの移籍はいわゆる“個人昇格”であり、ウニオンのウルス・フィッシャー監督もすぐさま原口を重要な中軸に据えた。
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フィッシャー監督は原口を純然たるインサイドハーフとして評価し、特に攻守両面での肉弾戦を厭わないファイターとしての素養を見初めていた。約8年前のヘルタでのデビュー戦で、相手DFに叩き潰されて右肩関節を負傷した原口はもういない。ブンデスリーガの中では華奢で小柄な彼が局面勝負に挑んで相手を数メートル吹っ飛ばす姿に、この選手がたどってきた長く険しい、それでも意義深い道のりが見える。
ウニオンのサポーターが原口のプレーに心を奪われるのに時間はかからなかった。労を厭わず、献身的で犠牲的でありながら、激しい闘争心を兼ね備えている。すべてのウニオンの選手を「フッスバル・ゴッド(サッカーの神様)」と称するウニオンサポーターは、オリンピアシュタディオンのスタンドに「我々のベルリン」と書いた横断幕を掲げ、毎試合“神様“たちに勝利を託す。その意思を十全に汲み取った原口は、ダービーマッチ直前のオリンピアシュタディオンで敵チームのサポーターズソング「セイリング」を聞き、その歌声に別の意味で奮起して自らのタスクに邁進する覚悟を決めていた。
原口にはダービーマッチが似合う。それは、この選手がクラブの歴史とサポーターの思いを自身に投影させ、そのエモーションをピッチで具現化できるからだ。その振る舞いを見た者は、改めてこの選手の魅力に気づく。原口の先制ダイビングヘッドでフルスロットルに達したウニオンはヘルタの追撃を1点に抑え、アウェーで4-1の大勝を果たした。サマータイムに移って20時を過ぎてようやく夕闇が迫るなか、ウニオンの背番号24が威風堂々と勝利の余韻に浸っている。
この充実感は何物にも代えがたい。確かな手応えを抱きつつ、原口元気のプロサッカー人生は、これからも、熱く真摯に時を刻み続ける。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。