ファンとの絆が活力に 長谷部誠も認めるフランクフルトの守備の要が完全復活できた訳
EL準々決勝第2戦でバルセロナを破る原動力となれるか
バルセロナ戦でもヒンターエッガーは際立っていた。相手FWピエール=エメリク・オーバメヤン相手に何もさせなかっただけではなく、タイミングのいいカバーリング、そして前に出てのインターセプトでバルセロナの攻撃を次々に跳ね返していく。
守備だけではなく狙いすましたスライディングタックルでFWアダマ・トラオラからボールを奪い返すとすぐにMF鎌田大地の足元へ鋭いパスを送るなど、チャンスメイクでも貢献。同点ゴールのシーンではバルセロナが優れたコンビプレーを見せたのは間違いないが、危なくなりそうなところ、いつもそこにはヒンターエッガーがいた。
後半5分ごろ、中盤に出てボールをカットすると、奪い返そうとするバルセロナ選手が2人、3人と矢継ぎ早にチェックに来るシーンがあった。激しい競り合いの連続ながらすべてのシーンでボールを守り切ったのだ。前線へと蹴り出したボールは相手GKまで飛んで行ったが、ファンからは割れんばかりの大声援が起きた。
試合後の記者会見では、地元記者の1人がそれこそ興奮気味に、「今日のヒンターエッガーは1人で5人相手でもすべてを弾き飛ばしていた」という表現でプレーについての感想をグラスナー監督に求めていたが、それほど印象的なプレーの連続だった。
「マルティンは何度も相手のボールを跳ね返した。今また継続的に好パフォーマンスを発揮してくれていることは本当に喜ばしい。そして今日はチーム全体が組織的に守備で戦ってくれた。素晴らしいクオリティーだった」(グラスナー監督)
ヒンティーと野太い声でファンが叫ぶ。それを受けて、ヒンターエッガーは無尽蔵のエネルギーを手にする。現地時間4月14日に行われるカンプ・ノウでの第2戦はアウェーだが、2万5000人ものフランクフルトが駆けつけると予想されている。ファンとヒンターエッガーの絆が、フランクフルトを準決勝へと導いてくれるかもしれない。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。