浅野拓磨が照らすボーフムの未来 ホッフェンハイム戦の2ゴールで示した成長の“道標”

カタールW杯の組分けの感想を聞かれるも、「今日のような一戦に全力を傾けて戦う」とコメント

 試合後、純然たるマン・オブ・ザ・マッチとして現地テレビ局「Sky」のインタビューを受けた浅野の表情は晴れ晴れとしていた。インタビュアーが「アサノはドイツ語よりも英語のほうが得意なので」と前置きしたなか、本人は淀みなく言葉を紡いで「いやー、今日はラッキーな面もありました」と謙遜した。

 また、この週はカタールW杯本大会の組み合わせが決まり、ドイツ、スペイン、大陸間プレーオフのコスタリカとニュージランドの勝者、そして日本がグループリーグE組で戦うことが決まっていた。

 当然インタビュアーがその話題を振る。

「ドイツと日本が同じグループリーグで戦うことになりました。どう思いますか?」

 必ず問われるであろう質問に破顔一笑した浅野は柔和な表情を崩さず、滑らかな英語でこう返した。

「僕が今プレーするドイツと、母国の日本が対戦することを嬉しく思っています。でも、カタールで僕がプレーできる保証はまだないですから。今は目の前の一試合、今日のような一戦に全力を傾けて戦っていこうと思っていますよ」

 インタビュアーが最後に「君はドイツ語も話せるんだよね?」と聞くと、浅野は正確なドイツ語で、「いやいや、少ししか喋れませんよ」と言ってはにかんだ。バイリンガルではないかもしれないが、この選手がヨーロッパの地で生きてきた証が、その所作に刻まれている。

 2009-10シーズン以来12シーズンぶりにブンデスリーガ1部で戦うボーフムは、日本のスピードスターの活躍で今季リーグ戦10勝目を挙げた。清く、逞しく、日本代表FWが創設から150年以上が経過したクラブの行末に眩い光を照らしている。

(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)

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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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