日本とW杯初戦激突のドイツ代表が優勝へ“本気モード” 初の専門コーチ登用で強化…「あらゆるトリック」を準備

日本と対戦するドイツ代表【写真:AP】
日本と対戦するドイツ代表【写真:AP】

【ドイツ発コラム】ドイツのフリック監督就任後、セットプレーを重要視

 カタール・ワールドカップの組み合わせがいよいよ決まった。過去4度優勝歴のあるドイツは、第1ポットのスペイン、そして日本と同組となった(残る1枠はニュージーランドとコスタリカの勝者)。

 ドイツ代表監督のハンシィ・フリックは「予想していたとおりというか、参加してくる国の名前を見たら、どこにも簡単な相手はいない。どのチームにも強さがある。抽選結果を受け入れるだけだよ。初戦から集中して臨まなければならない組になってハッピーだ。我々は可能な限り長くこの大会に残っていたいと思っているし、決勝まで残りたいと思っている。だからこそどの試合でも90分間、自分たちの強さを引き出せなければならない」とコメントを残している。

 ドイツは、2018年のロシアW杯で前回大会優勝国ながらグループリーグ敗退。巻き返しを懸けた20年EURO(欧州選手権)でも決勝トーナメント1回戦で敗退と満足のいく結果を出すことができなかっただけに、今大会に懸ける意気込みはものすごく強い。

 チームにはスター選手が勢ぞろい。20年には全部で6冠を達成したバイエルン勢のGKマヌエル・ノイアー、FWトーマス・ミュラー、MFヨシュア・キミッヒ、MFレオン・ゴレツカ、FWレロイ・サネ、MFジャマル・ムシアラ、DFニコラス・ズーレ、MFセルジュ・ニャブリのほか、昨季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝のチェルシーでプレーするMFカイ・ハフェルツ、DFアントニオ・リュディガー、FWティモ・ヴェルナーがいる。それこそプレミアリーグ覇者のマンチェスター・シティで中心選手のMFイルカイ・ギュンドアンさえレギュラー確約されてないほどの選手層だ。

 そんなドイツはフリックが新監督に就任して以来、重要視して取り組んでいることの1つにセットプレーがある。フリック就任後9試合でドイツは34得点を決めているが、うち6点がセットプレーからだ。

「チームが上手く成果を残してくれていることを素晴らしく思う。どの選手にとっても我々が取り組んでいることが成功を約束してくれることが見てとれている。全体的に見て満足してる」とフリックは手応えを感じているが、振り返ると14年ブラジルW杯で優勝した時もセットプレーはチームの大きな武器であった。そして当時アシスタントコーチとして担当していたのが、フリックだった。

「特にW杯や欧州選手権のような大会ではセットプレーの持つ価値は大事になる」

 フリックがそう語っていたとおり、ブラジルの地では何度もセットプレーから重要なゴールが生まれた。ポルトガル戦、そしてフランス戦でDFマッツ・フンメルスが決めたヘディングゴール、ガーナ戦でのFWミロスラフ・クローゼのゴール、さらにブラジルを撃沈した先制点となったミュラーのゴールもそうだ。

 フリックが参考にしていたのが、フライブルクアシスタントコーチのラルス・フォスラーだ。「フォスラーのアイデアを基に、チームにとってプラスになるようにさらに考えを深めていった」と当時明かしていた。代表のワークショップへ招待し、セットプレーのバリエーションやアイデア、トレーニングへの落とし込みについてプレゼンをしてもらったという。フォスラーは今もフライブルクでコーチを務めているスペシャリスト。今季フライブルクがセットプレーからの得点がリーグ最多というところからもその貢献度の高さは分かる。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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