森保ジャパン、W杯へ「攻撃力増強策」は? 右の伊東、左の三笘に“質的優位”があればチャンスは作れる
【識者コラム】予選での日本代表の武器は右ウイングの伊東純也だった
オーストラリア代表に2-0と勝利し、ベトナム代表戦を残して予選突破が決まった。まずはめでたい。
初戦ホームでのオマーン代表戦に敗れたのが象徴的だが、欧州組が増加したことでコンディション調整が難しくなったのが今予選の大きな課題だった。招集してすぐに試合という日程のなか、森保一監督の姿勢は一貫して相手にやらせないことだった。守備面で信用できる選手で先発を固めている。自分たちがボールを支配して主導権を握るよりも、最低限相手にやられないことを優先していた。三笘薫や久保建英のようなタレントがいても、頑なに戦闘力重視の編成を維持。見栄えはしないが、コンディションが不透明で戦術練習もほぼできない予選で頼りにできるものがそれだったのだろう。
石橋を叩いて渡るような慎重さではあったけれども、それで無事に予選を通過できたのだから成功といっていいと思う。
カタールでの本大会も基本的にはどの試合も接戦ベースになる。それを考えると、予選での膠着上等の戦い方は本大会への準備につながっていたと言える。ただし、得点を取らなければならないケースもあるはずなので、そこをどうするか。
予選での日本代表の武器は右ウイングの伊東純也だった。オーストラリア代表戦の10分間で2ゴールをゲットした三笘も左にいる。この左右のウイングの個人技で殴り続けるという選択はまずあるだろう。
日本代表は、例えばスペイン代表のようなパスワークで淡々と崩していくプレー構造を有していない。ユーロで優勝したイタリア代表のパターン化に近く、個々の能力からいってその劣化版にすぎない。決まったパターンは賞味期限が短く、イタリア代表はカタールへの道を閉ざされている。ましてアジア予選でも得点量産とはいかなかった日本代表の攻撃力はかなり心もとない。
ただ、両サイドへボールを届けるところまではできるだろう。右の伊東、左の三笘に質的優位があればチャンスは作れる。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。