J1清水、積極的な守備から今季初の“無失点”で見えた光明 新たな攻撃スタイル確立も期待

ここ2試合とは違う“積極性”を1万3106人のサポーターに披露

 C大阪戦ではDF山中亮輔の高精度のクロスにより2失点している。ポゼッションサッカーの神戸のスタイルとは違うのかもしれないが、この試合で神戸はクロスを多用しなかった。簡単にはクロス上げさせない守備もあったが、クリア能力に長けているヴァウドが今シーズン初出場したこともクロス対策としては効果的だった。

 それでも、前半36分には左サイドからMF汰木康也に折り返され、ニアサイドで大迫にヘディングで合わされる決定的なピンチの場面を迎えたが、ここは最後の砦である権田が好セーブ。その後にも何度か権田がゴールを死守し、この試合は今シーズン初の無失点試合で終えることができた。

「良い守備から良い攻撃ということをテーマに選手たちとイメージを共有し、それが上手く出せた」と平岡監督は話し、勝利することはできなかったが、0-0の引き分けで連敗ストップ。また得点こそ決めることができなかったが、ここ2試合とは違う“積極性”を今シーズン最多観客数となった1万3106人のサポーターに見せることができた試合でもあった。

 ただ、平岡監督が目指す「攻守に主導権を握るサッカー」にはまだほど遠いのも事実。怪我人も多く抱え、今は理想のサッカーよりも昨シーズンの残留争いで勝ち点を積み上げたような現実的なサッカーに徹するしかないのだろう。まだ5試合が終わったところであり、慌てる必要はないのかもしれないが、4月、5月で14試合もの公式戦をこなす日程が待っていることを考えれば、早い段階で平岡サッカーの構築が必要となることは間違いない。

 まだ1試合を無失点に抑えただけであり、この積極的な守備を継続し、さらに攻撃の質を上げていかなければいけない。2月末に新加入が発表された韓国人FWオ・セフンもようやくチームに合流し、その193センチという長身を生かした攻撃はカウンターだけではない、新しい攻撃スタイル確立も期待できる。システムも現在の「4-4-2」から「4-1-4-1」もしくは「3-5-2」というオプションも検討していくことを平岡監督は示唆しているので、さらに進化した清水が見られる日も近いのではないだろうか。

page1 page2 page3

下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング